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第ニ章 神都の見習少女  14話  ワガツミのヒ

今日もお読みいただきありがとうございます。

「あぁてぇてってぇえ! 闘技衣の下でも痛いぜ! ほぉらな、やっぱり茶番だったろ。だから俺はだったんだよ」

「どこが茶番なの! 笑い事じゃないのよ」


 ぼやきながら首筋をさすって起き上がった男に、女探究者がへたり込んだまま突っ込んだ。

黙ってるのが気恥ずかしいのか、どっちも声が大きくて少し芝居の台詞染みた話し方だ。


はなから魔法も武技も敵わねぇのに、相手するように仕向けられたんだ。これが茶番でなくて何だってんだよ」

「それにしても末恐ろしいわね。ねぇ、エノラちゃん。貴方あんた、まだ12に成ってないでしょ。勝負に負けたって女の勘じゃ負けないからさ。でもここまで綺麗にやられちゃうと、年の事なんて何にも言えなくなる。その為に私達を引っ張り出したのよね」

「だよな。何もかも全部ギルァム旦那の手の内で転がってただけなんだぜ。全く、嫌んなっちまうねぇ」


 彼はジロリと旦那ギルァム様を睨んだけど、口調は柔らかい。

あたしの方を見てくれないのは、やっぱり負けたのが悔しいのかな。


「悪いな。早くこいつを連れて魔窟に入りたくてな。有無を言わさぬ状況を作ってしまうのに役立ってもらった。ありがとうよ」

「まぁ、どのみち試験官としては結論を出さなきゃならんのだから構わんし。変に悩まなくて済んだ分、楽っちゃあ楽だったからいいんだ。おりゃぁ、単に半分ほどの年のに手も足も出なかったのがこっずかしいだけでね」

「ねぇ、ギルァムさんの武術って誰でも習えるのよね。私にも教えてくれないかしら」

「いいが。その年からだと大して強くはなれんぞ」

「失礼ねぇ、まだ二十歳はたちを幾つか越えただけよ」

「出来れば一桁ひとけた、最悪でも成人前に始めんとな。まぁ、他の武術をやってなければ二十歳はたちでも無理じゃないが。よその武術と体系が違いすぎて、そっちの癖が付いてると全く上達せんのだ。二十歳はたちにも成るとよその癖を消すのはまず無理だからな」

「はぁぁ、確かに。習ったものを忘れるなんて出来そうにないわ」


 天地流について言ってる事は間違い無いけど、同じ成人前でも向き不向きで伸び方が全然違う事は言わないのね。

天地流の上乗せが無くても探究者に成れてるんだから、探究者になった人の素質はきっと凄いんだと思う。

バクルットへ奉公に来てたらきっとカザムさん位には成ってたんじゃないかな。

ちなみにあたしとカザムさんの強さは今でもそんなに変わらないし、メルノアお嬢様はあたしよりも強い。

この三月みつきあたしが取り組んで来た鍛錬は今の強さを上げるためじゃなくて、これからの伸びしろを拡げる為のものだからね。

あたしが強くなるとしたら、それはこれからなんだ。


     *


「へぇ、これが探究者のライセンスなのね。何だかもっと特別なものかと思ってたけど、そうでも無いのね」

「実は凄いんだよ。例えばこうしてたわめる事は出来ても折ったり割ったりは無理だし。表示を消したり別に書き込むのも普通は出来ない。それに何よりね……」


 その日の夜、続き部屋のドアから入って来たマチアにライセンス証を見せびらかしてしまった。

マチアは6センチ✕9センチくらいの角が丸められた薄い板を弄ぶ様にして眺めている。

探究者ライセンスは即日発行、ギルドに発行の魔導具があるのでギルドに居るのが大前提だけど。

それは仮ライセンスも同じで、見た目もほとんど変わらない。

よく上級とか中級とか探究者を区別して呼ぶけど、発行されるライセンスに違いは無くってギルドに登録された記録--魔窟での活動や地上の魔獣狩りの実績など--で判断されるのよね。

だからランクの差は一般人にとっては何の違いもなくて、要救助や魔獣暴走スタンピードの際の仕事の振り分けとかに使われるだけ。

仮ライセンスは標準年齢--成人になる15歳--に達していない者への特例措置で、特例だけに所謂いわゆる初級者レベルでは取得できないのが普通なので、仮だからって馬鹿にされるような事はまず無いんだって。

唯一の違いはカードの片隅に【未成年】て表記されてる事。

ギルド内のバーや食堂で酒類を売ってもらえないから、そんな時に『お子ちゃま』とかって揶揄からかわれるのはあるみたいね。


 なんて偉そうに話してるけど、あたしも実際に仮ライセンスを受け取って説明を受けるまでは漠然としか知らなかったのよ。

ライセンスカードには大事な機能が魔力付与されていて、まず、倒した魔獣の記録と魔窟の到達記録が自動登録される。

魔獣の数についてはその戦闘に関わった人数の頭割になるので、サポート役--全く何もしないで一緒に居るだけじゃ駄目だけど--の人にも同じ記録が残るのよ。

それと一定期間どこかのギルドか登録住所に立ち寄らなければ遠隔信号を発信する機能。

これは遭難とか紛失の際にどこに在るかを確認するためで、もう一つは他人が一定時間保持している場合も別の遠隔信号が発信される。

これは付与魔力内の信号だからすごく微弱で一定以上離れると専用魔導具が無いと感知出来ないらしいわ。

そして最後に、ギルドに立ち寄った際にそれら全ての新規記録を追加登録する。

たった1枚のカードにこれだけの機能を付与するなんて『さすがにギルドの魔導具は凄いですね?』と訊くと旦那様は『そうだな。俺の【練成】でもこれだけやるとしたら酷く面倒だ』ですって。

思わず続けた『【練成】って何だか色々な事ができて羨ましいです』には『俺の【練成】は結構手間が掛かるから現場でちゃっちゃと使う機会は滅多に無いが、その点お前のは現場と言うか実戦向きで使い勝手が良さそうじゃないか』って返ってきたんだけど、あたしの【天鳴】は実際まだ何をどこまで出来るかも解っていない。

まぁ、今の『音の響きを読み取る』だけでも充分役に立ってるから贅沢は言えないんだけどさ。


 こうして無事ライセンスを手に入れたのも、旦那様が中級探索者達をの上で操ってくれたお蔭なんだけど。

あれは別に上級者の不在を狙った訳じゃなくて、魔獣狩りチームの事情とか個人的な鍛錬の具合とかあたしの方の事情で最短の段取りを進めたら偶然ああなっただけなんだって。

『お前の実力があればどんな条件でもライセンス発行に持ち込める。俺の後押しさえあれば……だけどな』って言うのも大袈裟じゃなくて臨機応変に色んな条件に対応する旦那様は、商人あきんどと探究者どちらも極めた唯一無二の人なんだなと思う。

あたしもそんな人に認められた自分を少しは誇ってもいいのかな。


     *


 そんな訳で魔窟に潜ることが出来るようになったあたしが最初に向かったのはタンデンロプ魔窟だ。

中イクァタには沢山の魔窟があるんだけど、これは神都の西に在って一番近い魔窟。

かなり小規模な魔窟で完全制覇されてるし、深層の蟲型魔獣もカブトやクワガタは居らず最強種がコガネムシだからコガネ魔窟って通称の方が有名。

神都から近くて初心者が比較的安全に経験を積む事ができるので低層は賑わってるけど、熟練探究者にとっての旨みは少ないから中層以降はいてるのが普通みたい。

あたしはまずここで旦那様から魔窟探求のノウハウと天地流の魔窟適応を教わる。

とにかく始めて潜る魔窟が楽しみでしようがないのよ。


 あっ! 緊急事態で霊山魔窟に立ち入ったのは極秘だし、あたし自身も魔窟の細々した事に気を回す余裕なんて全然無かったんだからノーカウントでお願いします。

格好かっこつけるなら『我が罪の㊙』なんて封印でも施して誰にも知られない様に仕舞い込んでおきたいんだからね。

お正月三が日も今日でおしまいですが、

まだ土日が残っていますね。

もうしばらく非日常を楽しめる方も

お正月から忙しかった方も

皆さまお体くれぐれもご自愛くださいませ。

明日もまたよろしくお願いいたします。

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