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第四章 大陸の探究少女  24話 とまどいながら.

本日もお読みいただきありがとうございます!

「もう駄目! これ以上は無理!」

「俺等も限界だぜぇ」


 山裾の樹をると言っても山の周り全部が無理なのは当たり前で、伐るのは延焼する可能性が高い森や林が迫っている部分とその対面側だけ。

こちらから見えない裏側の斜面の下にはこの河の上流が回り込んでるので、延焼の可能性はほとんど無い。

見ただけじゃ漏れがあるかも知れないからティリオとチャンクのスキルも動員して確認したところ、やはり燃え広がる可能性があるのは山同士の合間、全部で4ヶ所。

一番河に近いところ両斜面合わせて50本程は伐って河に流し終えたけれど、正直それでもうクタクタになってしまった。

しかも残り3ヶ所で100本以上が生えてる場所は河からずっと離れてて、移送トランスファだけで凄い魔力量が必要になる。


「しようがない、こうなったら最後の手段しかないわね」

「最後の手段って?」

「何だ?」


 訊いて来たティリオとチャンクにニッコリ笑ってあげる。


「燃やし尽くしてから消すのよ」


 延焼の可能性がある残り3ヶ所を先に焼いてしまう。

もちろん完全に鎮火させないと駄目だけど、枝を落としたり運んだりするよりはずっと楽なのよ。


「チャンク、ティリオ。あんたたちの手楯を貸してくれない?」

「別に良いけど、どうするんだ?」

「付与の灼熱バーン凍結フリーズアップに私とエノラがブースト掛けて、深層魔核1個分を一気に放出させるのよ。山の斜面1つには全然足りないけど、数十本限定なら燃やし尽くした後の冷凍鎮火も出来る筈だからね」

「ついでに長剣の灼熱投槍バーンジャベリン氷柱槍アイシクルランスで手伝ってくれると助かるわ」

「じゃあ僕は燃やしてる間に火の粉がよそへ飛ばないか見張っておくよ」


     *


 最後の手段で作業は大幅に捗って、何とか日暮れまでに次の街へ辿り着ける時間に終了することが出来た。

体力魔力に余裕が無い訳じゃないけど、皆もう気力が尽きかけてる。


「さあ、急ごうぜ。これで宿が取れなかったら最悪だ」

「ちょっと待て! 何だぁ! チャンク、あそこ!」

「えっ? あっちの山か? あぁぁ!」

「「どうしたの?」」

「向こうの山に火が付いた」

「なんですって!?」

「あたし達が飛ばした火の粉なの?」

「いやぁ。そっから逃げてく奴が居る! こりゃあ、ひょっとすると、こっちの山も」

「「放火?!」」

「ティリオ。逃げてる奴って、まだ捕捉可能?」

「あぁ、次の山に逃げ込んでも見逃さないよ」

「追跡ね! ふふふ、このマチア様から逃げれるなんて思わない事ね! チャンク、行くわよ!」

「何でお前が指図……、まぁいいか。おぃ、ちょっと待てょ!」

「ティリオ、あたし達は馬で向こう側に回り込みましょう」

「あぁ、そうだな」

「フィリアス、ダフネと他の馬達をよろしくね」

「了解です」


 あたしはシルファに跨った。

万一追跡劇になったらダフネだと負担が大きいもの。

相手の位置を捕捉しているティリオの先導で山裾を裏側へ回り込んで行く。


「悪いな、山火事なんて起きて無けりゃ絶対に見逃さなかったんだが」

「それはしようが無いわ。それにあの時捕まえていても向こうの山火事はもう消せなかったもの」

「あぁ。それで、向こうは俺達が魔力を使って作業してたのを見てた筈だ。だからかなり用心してると思う」

「そうね、誰も見ていないと思ってかなり大胆にやったもの」

「なのにまだ俺達が居る間にまた火をつけたのは何故だろうな」


 山の裏手に回ったあたし達は放火犯を追い詰める為に山に入った。

【探知系スキル】のおかげでティリオとチャンクは放火犯を探知し続けているので、余程の事が無い限り逃がす事はない。

それを前提にのんびりとも思えるような話しながらの追跡なのだけど、ティリオの言葉が棘になってあたしの頭をチクチクと刺し続ける。


「それってまた例の【黒幕隠し】?」

「じゃないか?」

「黒幕が逃げる隙を作るためにわざと見つかる様に火を着けたの?」

「当の本人はどう思ってるか知らないが、そうしむけられたかも知れない」

「そう言われれば確かに辻褄が合うけど、なんだか認めるのはだわ」

「まぁ捕まえてそいつが何を話すのか。まだ何も分からないんだ」


     *


 捕縛は時間の問題だけだったけど、相手の位置を捕捉しながらの挟み撃ちにしては時間が掛かったように思えた。

少しずつの時間が積み重なって次の街へ着いて宿を取るタイムリミットを超えてしまう。

そうなると一番近い町はトスカッタで、結局あたし達は取って返す事になった。

次の街は小さな町だから放火犯を預けるにも不安があって、なにより魔窟の街じゃなくて探究者ギルドが無いのが一番の不安材料だったのよね。


 トスカッタに着くと宿より何よりギルドへ向い、ギルド長に面会を申し入れた。

幸い在勤中で事情を伝えると職員が跳び上がる様に報告に向かう。

戻った職員に放火犯を引き渡して、あたし達は彼の執務室へ入った。


 ギルド長は何やら陰鬱な面持ちを隠さずあたし達を迎えた。

大規模とは言え、たかが放火でこの面相は無いなと戸惑いながら・・・・・・少し待つと、彼の方から切り出されたのは例の犯罪集団の件で検挙起訴した中に有力な政治家の身内がいたらしい。

身内とは言っても遠縁で親戚の端くれに過ぎないのだが、その叔父が政治家の第一秘書でどうしても外せない人物なのだそうだ。

まさかギルドからの起訴を取り消せなどと言う政治家はいないのだけど、一括起訴したものを彼だけ個別起訴に切り替えて欲しいと言う【お願い】が先程届いた。

要は処罰を軽減どうこうと言う事では無くて、役所の司法判断を個別にする事で出来るだけ目立たない形で処理を済ませたいのだろう。

その意図は分かるし無理無体な要求でもないのだけど、一括起訴した全員の資料を作成し直して再提出する事になって、役所が手を出せない起訴だけに全ての作業をギルドが受け持つ事になるらしい。

しかも公判日程がすでに決まっているので資料差し替えの期限が明後日に迫っている。

すでに出来ている物の訂正だから作業自体は間に合うが、問題はこの件に関して間違いが発見されれば役所から執拗な嫌がらせが来るのが目に見えている事。

役所に対して特権を振りかざすって言うのは、そう言う事なのよね。

何より怖いのは訂正漏れ。

仕方ないから手伝うことにする。

あたしだって資料の一言一句を覚えてる訳じゃないけど、どこに何が書かれていたかは全部把握してるから、訂正箇所に訂正内容の付箋を貼るくらいは容易い。

一旦ギルドを出て宿を決めてから戻って来る事にした。


 翌日午後にギルドで職員達が再作成した資料のチェックを終えて、やっと【放火事件】の話をすることが出来た。

昨夜あたしに資料の件を丸投げしたギルド長はその件を職員から聴いて、今朝一番から確認を済ませていた。

このトスカッタから北へ抜ける街道が例の山地の中を走っていて、燃えた山の西隣りには廃鉱の街を再開発した大規模な療養施設が運営されていたんだけど、製材木工や山間農業を観光資源にした事業と結びついて大型リゾートに発展しつつあるそうなの。

ところが上物うわものの地主達とは別に廃鉱の持ち主は地道に調査を続けていて、新たな鉱脈を発見したのよね。

実はその廃坑の再掘の申請が許可されて掘削を進めていたら、リゾート地が目玉にしていた【温泉】の源泉にぶち当たってしまった。

入浴の習慣が無いこの世界だけど療養施設としての【温泉】の効用は評価を高めていて最近の人気はかなりの物らしく、さらに農耕面での温熱利用も進んで需要は高まるばかりだったそうよ。

ここで誰にとっても不幸だったのは新たに発見された鉱脈が人体への有害重金属を高濃度に含んでいた事で、それ以来源泉は人知れず汚染されてしまった。

リゾート長期利用者や地元の人々の間に不調を訴える者が散見され始めたのが一昨年で、昨年からは拡大の一歩を辿っている。

皆、鉱床採掘が原因ではないかと気付き出しているけれど、調査は始まったばかりで確実な結論が出るにはもう少し時間が必要でしょう。

原因が特定されれば保障問題に発展するのは確実で、莫大な金額になるのも間違いない。


 でも結論が出た時点で、肝心のリゾートが別の要因で運営されなくなっていればどうだろう。

利用者の体調不良なぞではなく、例えば大規模山林火災による焼失が原因でリゾートが事前に無くなってしまったとすれば保障は大幅に減額されるに違いない。


 単なる山林放火に見える一件だけど、その辺りの利害が複雑に絡み合っていそう。

尚かつその手段を考えただけでなく唆した存在がいるとすれば、それはどう捉えるべきなのかしら。

第四章も明日が最後で、翌日から第三挿話の続きが始まります。

第四挿話は10日ほどの予定になります。

どうかよろしくお願いいたします♪

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