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第四章 大陸の探究少女  13話 アルマージ.

お寄りいただきありがとうございます。

「じゃあ、頑張ってね」

「ホントに何もかも、ありがとうございました」

「【先生】と【おばあさん】にもよろしく」

「全く2人共張り切っちゃって、見送りにも来れない程まだ頑張らなくても良いのにね」


 魔窟の街ソルサイゾの例の地区はアルマァジという呼び名になった。

それまでは広範囲の被災地から来た人々のそれぞれの思いから統一した呼び名が決まらなかったらしくて、心機一転新しい名前の下で一致団結しようって事になったらしい。

あたしだけが【波】っていう意味を知ってる名前で、『ここから新しい波が起きれば良いな』とつい口に出したら何故か気に入られてしまったのよね。


 保護団体擬きやそれに関わる役人たちを強制排除するんじゃなくて、問題を根本解決する方針を模索したあたしたちは早速、翌日にはキャスリーと【先生】それに病が落ち着いた【おばあさん】にその話をした。

元来地区の住民が持っていた権利や、それに関わった団体の話も交えてじっくりと話を進めると徐々に3人の顔付きが変わって行く。


「そんな事に成ってるなんて全然思わなかったわ」

「当然だ。君等に物を教えた私が何も理解していなかったのだからな。これは私を含めた教える立場の者の責任だよ」

「いいぇ。それは違うわよ。あなたの世代にここの在り方を教えたのは私等だからね。ここにやって来た者が何も気付かずに次の世代へ間違った事をそのまま引き継いでしまった事に端を発してるのよ。元はと言えば私達の所為だわ」

「【先生】【おばあさん】、私の年代の子達だって気づく機会はあった筈だわ。これはこの地区に住む全員の問題なのよ」

「でももっと早く問題に気付いていれば君のご両親の病気も」

「いいぇ、だってうちの両親も【先生】と同じ世代ですから。負った責任は同じですよ」

「そうだな。横から口を出す話じゃないが、そんな事は今の問題が解決してからで良いんじゃないのかい?」

「チャンクさん。それはそうだけど、私達はまだ何をすればいいのかも分からないの」

「だろうねぇ。だからする事まできっちりと話し合おうって事だ」

「私等部外者の話なんか聴く気にならないかも知れないけど。話して納得出来れば、実現の方法まで煮詰めてしまえると思うわ」

「いやぁ、いくら何でもそこまでは無理でしょう」

「【先生】! 口幅ったいようですけど、僕のエノラ先生はその手の事なら少なくともこのソルサイゾには並ぶ者の無い大軍師なんです。本当は今の状態を作った人達を突き止めて根本から勝手に荒療治をする積りだったんだけど、今さらそれをしても誰の為にもならないかも知れないって皆さんと相談する事にしたんです。最後まで話せばその凄さが解りますから」

「そりゃ、確かにアンタ等みたいな上級者パーティが居れば何でも出来るんだろうけど、アンタ等はセムリに行っちゃうんだよね。行っちゃう人の言う事聞いて失敗したらどうするのさ」

「キャスリーちゃん、どうでも良い事だが1つ勘違いがあるぞ。確かに俺とティリオは上級入りをしたばかりのパーティーだがな、エノラとマチアは1人で深層に潜って生還できる数少ない単独上級者なんだ。このツフガに居るかどうかは知らないが、旧四公国連合ユニオンオブフォーデュークダムス全部合わせても居るか居ないかの化け物レベルの探究者だぞ。そんな奴等が親身になって話そうってんだ。ちょっと耳を傾けてもバチは当らねえと思うぞ」


 最後はチャンクの脅しめいた言葉であたしとマチアを見る3人の目に怯えが走った状態から始まる事になったけれど、最終的にはあたしの現状打開策が受け入れてもらえたのでほっとした。

内容は、地道な情報操作から始める長期戦で、作戦行動を全てブロック化して各分岐点の選択肢から適切と思われるブロックへ飛ぶ仕組みにした。

ブロック内にもその時々の状況で指定のサブブロックを実施する指示がある。

昨日寝る前と今朝の手空きの時間でここ半年分ぐらいのフローチャートとコマンドブロックを書き上げた。

今日の午後と明日で2年分位を書けば進捗の誤差があっても1年半ほどはもつ筈よね。


 フィリアスとチャンクがかなり持ち上げた話をしてくれたけど、本当ほんとのところは地道な長期戦と言いながらも先走ってしまってる。

昨日夕方、皆と合流する前に探究者ギルドにアポなしで押し掛けて無理矢理ギルド長と面談した。

用件は近々での同行の申し入れ。

例の地区と持ち帰った資料の説明をして、『こんな物がウチに持ち込まれましてね』と圧力を掛けてもらう様にお願いした訳。

道理にそぐわない話なら別だけど、筋が通ってさえいれば単独上級探究者のお願いを無碍むげにはしない筈なのよね。

探究者にとっては相手の家に忍び込んで資料を入手するなんてヤンチャの内にも入らないから、案の定快く引き受けてもらえた。

洒落者の中年親父を一目見て、こんな小芝居じみた悶着が好物に違いないと見込んだあたしの目に狂いはなかったわ。

ギルド長に1枚噛んでもらうのは、初期段階で保護団体を本来の立場で地域住民の利益を守る組織に立ち戻ってもらうための素地作りと、あたしのフローチャートに対して不測の事態が起きた時のため。

フローチャートに記載のない事態発生の場合はまずギルド長に相談してギルドからあたしに連絡してもらうよう書いたし、ギルド長にもそう頼んである。


 【先生】が数多くの教え子に声を掛け、互いの仕事を扶け合いながらコマンドを実施する【チーム】を編成した。

【おばあさん】は元気に長生きしている人達で【プロジェクト】を組織する。

これはあたしが手に入れた当時の資料と保護団体発足当時の実体との整合性を見極めるためのもので、これによって先々のフローチャート選択肢が変わる部分があるんだ。

キャスリーは成人前後で未就労の若者を募って【リエゾン】を結成した。

【チーム】間や【プロジェクト】との連絡それに現場作業の補助を担当する。

フローチャート初動の一週間むいかかんを見守りながら彼等の理解度を確認して、あたしは少しだけチャートやコマンドの文言を修正して補足の注意書きを追加した。

もちろんその間にキルド長のお供でジャットの父親の訪問も済ませたし、ギルド長からの提案で【先生】を門前払いした役人にも釘を刺しに行った。

『ギルドとしてこれまでの事を追求する気は毛頭無いが、今後のそちらの出方によっては実力行使も辞さない』的な発言はどちらの胸にも深く刺さったと思う。

あたし以外の4人はギルドの中核メンバーと連携して、探究者をかたるゴロツキ達の一掃に取り組んだ。

取り組んだなんて言うと大変な仕事みたいだけど実際は一対一ならフィリアスでも手玉に取れる程度の連中で、噂を聞いて潜伏したのを見つけ出すのに苦労するだけなのよね。

そこでチャンクとティリオの探知系スキルが大活躍し、逃亡者はマチアが飛翔フライ界送系視認跳躍スルーディメンションで完全捕捉。

実際の捕縛数でフィリアスがダントツの成績だったのはマチア達3人の思惑で、それを察したギルド長が『特別中の特別だからな。上級者4人の推薦を無視は出来んが当面はお前等が面倒を見る前提での発行なのは当人を含め全員自覚していてくれよ』とフィリアスの【仮ライセンス】を発行してくれた。

但し、あたし達のと違うのは前提条件であるパーティ運用必須が併記されている事だ。

パーティ名を訊かれたチャンクとティリオは『あの町の名前は悪くないよな』『あぁ、全く同じだと取り違えるといかんから【アルマージ】にしよう』とお気楽に決めてしまう。

正式メンバーはチャンクとティリオの2名で他の3名は臨時メンバーとしての登録。

フィリアスの魔窟活動は他の4人の誰か1名との同時入窟が義務付けられた。


 こうしてやっとあたし達は魔窟の街ソルサイゾを離れた。

ここからは一路セムリを目指して北上する予定だけど、もうこれ以上何事も無く進めるかはまた『神のみぞ知る』なのよね。

明日もよろしくお願いします。

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