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6話 ぶら下がってない男は感情がない


 こ、これはもしや……!

 おっpp……


 「何処触っとんじゃワレぇぇ!!」

 「えっえっ……!」


 突然の情報に気を緩めたからか、彼女の本能的何かを触発したのかわからない。

 彼女の催眠は解け、暴走を始める。

 終いには俺の息子目掛けて、強烈なキックを……。

 

 「大丈夫、俺には珍獣人形が……!」


 ない!? だと。

 そうだ珍獣人形はさっき捨てたのだった。

 万事休す。終わった。


 「あぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 途端に激痛が身体を走り抜け、俺は出したことのない部位から、ものすごい悲鳴を吐き出した。

 さらに呼吸困難ような状態に陥り……意識が……


 「「「うおおおおおおおおおお!! よくやった師範!」」」


 最後に聞いたのは、聴衆の歓喜の声だった。

 俺はそのまま、意識が途絶えていった……






 目を覚ませば。正確には目を覚ましているわけではないが。俺はそこにいた。

 精神世界というやつだ。


 そしてそこにはソイツがいる。

 俺と同じ顔をしているが、サイズ感は15センチくらい。

 妖精さんみたいな奴だ。


 「マラタっ!」


 名をマラタという。

 マラタとは度々会っていて、でもなんだか今日は様子がおかしい。


 「私はユウタの夢を聞くのが好きだった」


 どこかで聞いたことのあるようなセリフをマラタは吐いた。


 「まて、それはどういうことだよ!」


 まるでお別れではないか。俺はお前と一生を共にするって決めたじゃないか。

 まだ素敵な場所に連れて行ってもいないし。


 「これは契約だ」


 マラタが俺の腰のあたりに近づく。


 「私のペニスをお前にやる。だから」


 マラタの身体はだんだんと、俺の股間に埋まっていく。


 「ユウタの夢を見せてくれ」



 「マラタぁぁあ!」



 ー



 嘘だろ? そりゃないぜ、マラタ。

 肩までかかる毛布を下ろし、俺はズボンをペラリと捲った。

 そこには何もなかったかのように佇む、マラタの姿が。

 それを引っ張れば何かに変身…なんてこともなく、ただそこにいるだけだ。


 「ここは何処だ?」


 そこは蝋燭一本で照らされた粗末な部屋で、俺はそのベッドの上にいる。

 特筆すべきものは何もない。ただ今が夜だということは推測できる。

 

 「よいしょ……ってアイラ?」


 そこにはベッドに立てかかるアイラがいた。

 ぐっすりと睡眠中のようで、起こすのはなかなか難しいだろう。


 「グヘヘ……」

 

 唾をゴクリと飲み込み、アイラを見つめた。

 そして保険の為、催眠をする。これでアイラは起きることはないだろう。

 何をしようとしているかなんてこと、今までの俺の行動を見ていればわかるだろう。

 

 アイラの重装備を丁寧にゆっくりと剥がしていく。

 いくら魔法防御、物理防御が高かろうが、あっちの防御力はないと、俺は高笑いを浮かべる。


 「さあ、解き放て! 今、その封印を解く時である」


 呪文を詠唱し、暴走を解放する。

 って? あれ? 

 なんでだ? いつも通りであれば、爆ぜてしまうのではないかと思われるほど、膨張する息子は今は通常状態のままである。

 このシュチュエーションが気に入らなかったのか? いや、そんなことあるはずない。こんな美人とできるなんてことあれば、暴走するに違いない。

 でも、実際は立っていない。

 その時、ふと俺の脳にある記憶が流れ込んだ。

 いや、でもそれはおかしい。その未来は無くなった筈だ。

 が、そうじゃなきゃそれは説明できない。

 

 ……俺はもしやEDになってしまったのかもしれない。


 理由はわからない。だがおおよその検討はつく。

 強烈なキックを受けた割に玉は無傷、だからつまり俺の息子は蹴られたという衝撃で不能になってしまったのだ。


 悪い夢でも見てるようだよ、まったく……

 その時からだろうか、俺の理性が薄れていったのは。






 「起きろ、ユウタ。もう朝だぞ」


 誉高い聖騎士アイラはユウタの背を揺さ振り、起こすのを試みた。

 するとユウタはゆっくりと重い瞼を持ち上げ、窓から差し込む朝日を眩しそうに受け止めた。


 「おはよう。アイラ」


 その表情はまるで、過酷な修行を終えた後の僧のようであった。

 無欲。ユウタはアイラに優しく微笑みかけ、ベッドから降りる。そして昨日のことを謝罪した。


 「昨日は私めの勝手に付き合わし、本当に申し訳ないです」

 「ああ、別にいいが……」


 アイラは引き攣った笑みを浮かべ、そう返答する。

 アイラには今のユウタが不審だった。たったの短い時間を過ごしただけだが、アイラはユウタの人柄が分かったと自負していたからだ。

 アイラの中のユウタはもっとよく深く、傲慢で、小汚いことを考えているような人だった。

 しかし今のユウタはどうだろうか、理性とういう理性が抜け落ち、何事にも無頓着、そして優しさを兼ね備えたという、一種の人間離れした存在。狂気であった。


 「なんか今日のお前、様子がおかしくないか?」

 「ふふふ。何をおっしゃっているんですか? 今の私がおかしいのではなく、前の私がおかしかったのですよ」

 「んあっ! 何も言えないのがムカつく」


 晴天からの陽光がユウタの背後に差し込むのも相まって、アイラにはそのギャップすこぶる気持ち悪く見えた。


 「ユウタ。お前の理性はどこへ行ってしまったんだ!」


 アイラはガシッと仏のようなユウタの肩を掴み訴えかけた。

 それと同時に確信した。この際、どんな手を使ってもいい、ユウタの人格を取り戻さねば。このままでは、魔王討伐なんて夢のまた夢である。


 「理性? そんなものとうの昔に捨てましたよ」

 「昨日の話だけどな!?」


 アイラの台詞は全く、ユウタに届くことなく砕け散り、アイラはかなりの強敵に絶望することとなった。

 しかし、アイラのターンフェイズはまだ終了していないのも事実である。


 「この手は使いたくなかったが……」

次回アイラ死す

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