プロローグ
世間では、童貞のまま30歳になると賢者になれると言われている。
果たして異世界でもそのルールは適用されるのだろうか。
そんなことをぼんやりと思い浮かべながら、人々の青ざめた顔を見つめた。
「ゆ、勇者の召喚に成功した」
長髭を蓄えた冠を冠る男が声を張り上げた。
賢者を超えた勇者と呼称されるなんて、皮肉にも限度がある。
そう思った。
ー
世の中は残酷だ。
これは高校三年生にもなって彼女いない歴=年齢の童貞の自分を哀れんだ言葉では決してない。言ってることは事実だが、そういうことではない。
それはつまり世の中、金で全て買えてしまうことである。
童貞だって金さえ積めば卒業できるのだ。
「はあ、はあ」
耳に微かに届くシャワーが床に跳ねる音に呼吸を荒くする。
そりゃあもう、ギンギンだよ。
だってこれから、ヤれるんだから。
やるという言葉の「や」の字をカタカナにした時点で察しは付いているとは思うが、俺は今、現在、童貞卒業の一歩手前の状況下にある。
お相手はもちろん、恋人でもクラスメイトでもなんでもなく、某SNSで知り合った、裏垢JDリサちゃんである。
よく考えたら、自分は未成年なので犯罪なのでは? と思うが、まぁ気にすることはない。
白色のバスローブの腿のあたりをぺらりと、捲る。
いつになく俺の息子は躍起付いている。
そして抑えきれない衝動を放つ息子に、優しく呟く。
「ちょっと我慢してろよ、あと少しでお前を素敵な場所に連れて行ってやるから」
そしてバスローブを下ろし、凹凸ができたのを確認した。
ベッドが回転するという発見にちょっとばかし感服して、ベッドの脇にそっと置いてある、ゴムの袋を待ちくたびれたようにペタペタ触る。
そうすると時間は刻々と流れた。
扉がガチャっと開き、バスローブ姿の裏垢JDリサちゃんが登場した。
シャワーの熱気かバスタブのジェットを堪能したからか、リサちゃんからはモワモワとした空気が流れる。
「ウヒョ」
その姿に自分でも出したことのない、情け無い声が溢れる。
さらにリサちゃんはそれだけでは留まらず、腰から巻かれる帯を解いていく。
俺はそれをマジマジと見つめ顔を赤くしていく。
ばさっ、衣服が落ちる音がした。
下半身から上へと視線を動かしていく。
そう、そこには裸体があった。
女性の裸体があったのだ。
今にも昇天してしまいそうだ。裸体なんてなかなか見るもんじゃない。というかお袋の汚れた体以外見たことすらない。
息子が早く早くと俺を急かす。
リサちゃんはベッドにゆっくりと腰を下ろして、俺の胸に触れ、帯を解き始める。
これは、いいよってことだよな!?
ドキッドキッ。心臓の音が耳にまで伝わる。
何キョドッてんだ俺。これではまるで童貞野郎ではないか。童貞なんだけどさ。
精一杯の勇気を振り絞り、素っ裸の俺はリサちゃんを押し倒す。
そしてギンギンに起立した俺を指で掴む。
おっといかん、一応着けとかなければ。
一時のテンションに身を任せると大変なことになる。
驚くほど冷静さを取り戻し、
ベッドに隣接する机に置かれた小袋に手を伸ばすと、リサちゃんが行く手を阻む、そして
「いいよ」
そう、ボソッと呟いた。
ええっ!? いいんすか! リサ先輩!
生で!?
その言葉で破裂しそうになった息子をリサ先輩に持って行く。
前戯なんてしらねぇ! 童貞なんだから!
「じゃあ、挿れるよ」
思えば長かった。道端に落ちていたヤングマガジンで産声をあげた息子。
だんだん卒業していく、同級生。そしてそれを羨む同胞たち。
すまないお前ら、俺は先に大人になるゼ。
走馬灯のように全てが脳を駆け抜けた。
そして俺は謎の光に包まれて……
続きは明日、投稿するます。
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