未来瑠の気持ち
前回、飯匙倩のすべてが解放され、本気モードの強さを引き出せるようになった六天王だが、現在小澪と銀次の前にて取引をやるか否か、そして神化した未来瑠をどう処分するかが考えられている。
<M「あまり長い間待ってるのも、相手が迎合作戦や能力の引き抜きの時間を与えてしまうようだな。これはやるしかないか」>
<B「まあ、このまま放っておいても何も進展しないからね」>
<ナ「それにしても、少し未来瑠の様子が変ですヨー?」>
<M「んっ?」>
未来瑠の目には涙が溢れそうになっていた。何を思っているのか、何を考えているのかわからない。
<M「よお おっかなびっくりの繭ちんよ」>
<繭「は、はいっ!?」>
<M「未来瑠が今何を考えているかわかるか?」>
<繭「ん~っと、それは諒さんの方が確実かと」>
<M「迎合攻撃を真似することはできるか?」>
<繭「う~、無茶ぶりだよ・・・でも、やってみるね」>
「ふふっ・・・」
繭は少し笑って見せた。
「ふん、自分の置かれてる立場を理解して無力さを知ったか?」
小澪は勝ち誇るように臆せず語る。
「貴方から 奪 い ま す ね 、迎合攻撃を。ーー凶簒奪ーー」
繭は一瞬で小澪の懐に入り、腹の中に手を亜空間を用いて挿入する。
「なん、だと・・・?」
小澪は激しく動揺した。併し、
「ふん!」
さすがに急所である下腹部のダメージは少なかったものの、胸を殴られて吹き飛ばされてしまった。
「ああっ・・・」
思わず未来瑠は声を出してしまった。
「そんなに動揺することではない。迎合攻撃を盗んだところで、我らカミには拒否する方法も知っとるわ」
ただ、繭も臆せず言う。
「もし、拒否しなかったら、どうなる・・・?」
そうすると未来瑠の中に入っていった。
「ふん!馬鹿馬鹿しい!未来瑠を乗っ取ってしまおうがカミには対抗できんぞ!」
「ふふ、フハハハハハハハハ」
ブラックマンバは高らかに笑っていた。
「どういうことだい?なんかおかしいことがあったのかね?」と銀次は聞く。
「お前も鈍感だな。手に胸を当てて考えることだ」とブラックマンバは返した。
「何なんだ・・・?」銀次も小澪も気づいていない。
しかし
未来瑠からは涙がつーっと滴り落ちている。
「あーあ、そういうことね、あいつ完全に本音を漏らしたのか」と諒が二人に聞こえないようにひそひそと語る。
「どういうことだってば!?」照夜淸が聞き返す。
「だって彼、"未来瑠を乗っ取ってしまおうが"って言ったじゃない?つまり未来瑠は完全に「棄て駒」なのよ。繭が少し気になってた台詞ね」
「おいおい、「棄て駒」ってひどくないか!?」
未来瑠は高校の3か月間、悠も小瑠璃も時慶もいない時間を暮らしてきた。彼女にとってはその残り二人の神、相手にしている鞦韆一族や諒・繭・ねむもいない、一人ぼっちの生活。
「はぁ・・・」
誰も対象がいなくて、何も変化がない日々。唯一経験したのは、時慶がいたときの「お前を見ている!」という驚かしだけ。もっとも、存在を消された時慶がいないので、未来瑠がメインで受けてることに頭の中では成っている。
「だれも、何も、私に興味を示さない・・・つまらないな」
そのような退屈した日々の中、繭が倒れたということで保健室に連れていかれたという情報が入る。
「繭・・・、ああ、敵か・・・でも、何か情報を探らないと・・・」
ドドドドドドドド
パン、パン、パン、パン、パン
「少し荒療治だけど、彼女の本質、探らないと!」
併し彼女は保健室に入るものの、絶望した。無数に傷が入った空間。まるで鏡になってその鏡は自分を映してるようで、相手の顔は変な形に曲がっている。そして、その顔にはモザイクのように黒く塗りつぶされている。
「なんで!?せっかく襲撃して能力をつまみ取ってそれを報告しようとしたのに・・・なんで・・・!!」
「なんでよ! なんでよ!! なんでよ!!!」
未来瑠はかがんで拳を地面にたたく。それが一切合切の情報も手に入らないことを知っていても。
ガシャーン!!!
ガシャーーン!!!
ガシャーーーン!!!
未来瑠の目の前の鏡が割れていく、そして、その前の風景を漸く見ることができた。
「どうしたの?」
繭が未来瑠の前に出てくる。
「いや、貴方が保健室に入ったからと聞いて。いや、情報を盗むとかそういうことはないんだけれども」
「本音が出てるよ」
「!!」
併し繭は語りかけてくる。
「情報が知りたい?それはなんで?」
「それは、ミッションとしてそういうことを求められているから・・・だから神化してあなたから能力を奪わなければならない」
「カミはね、貴方を捨て駒だと思っているのよ」
「えっ・・・・」
***
現実の未来瑠も大粒の涙で前を見れない。
「おい未来瑠よ、早く攻撃しないとやられるぞ!」と小澪は催促する。
「・・・フフフ」
ブラックマンバが不気味な笑みを浮かべる。
「何がおかしい!お前らに何がわかるというんだ?」
「聞いたことはあるが、カミってのは処遇が荒いんだっけか?もしかすると、小澪、いや、カミの幹部とやらは彼女を殺される前提の「捨て駒」にするつもーりだったんじゃないのか?」と銀次が語る。
「それがカミのしきたりだ!だからどうした!」
***
「なんで、なんで私が捨て駒にならなきゃならないの?」
「僕も、昔は能力素質が悪いとか、彼女をかまってたからと言って殺された経験があるんだ」とねむが語る。
「私は、みんなのことが知りたいの・・・それがカミに上納すると分かっていても」
「君は友達がいないんだね、昔のなっちを思い出すよ」
「なっち?」
「椎奈繭。僕の唯一の友達・・・」とねむが続ける。
「そ、そうなんだ・・・友達、なりたい。私には、友達が欲しい・・・!」
「ぷぷぷ・・・」繭がこそこそ笑う。
「何か、おかしいの?」
「いや、単純に友達が欲しかったら、そういえばよかったのに」繭は笑いつつも、彼女を抱きしめようとする。
「おねがい、します・・・!」
未来瑠も繭に抱き着いた。
***
未来瑠の神化が抑えられ、彼女は涙袋をパンパンにした状態で眠っている。
そして繭が現れた。
「これ、どうする?マンバさん」と繭が聞く。
「まあとりあえず諒らの方で話してくれ」とマンバは返す。
「バ、バカなああぁぁぁ!」
叫んだのは小澪だけではなく銀次も叫んでいた。
「うそだ、迎合作戦で迎合されるとは聞いてないぞ!だが、未来瑠如き奪われても、こっちの陣形には問題は・・・」小澪は焦りで早口になっている。
「いや、大ありだろ・・・」銀次は呆れていた。
「併し、トンデモねえことをするなぁ人間は。まさか迎合作戦を成功させられる奴にカミが入るとはね・・・」銀次は続けざまに呆れながら言う。
まさかのカミを迎合作戦で取り入れるとは、一体だれが想像したか。
「さて小澪、お前は吾輩が処遇してやろう・・・裏切者の罰を」
するとブラックマンバは蛇を背中から数十体くっついて現れた。そしてその蛇が小澪に攻撃を仕掛ける。
「ちっ、いてえなぁ!だが、アヴェンジアンデッドと同等である吾輩に人間の毒は・・・」
「神に対する毒を習得させている。お前が情報を上納する時間はあるかな?」
「ふん、そんな毒・・・ご・・と・・き・・・」
小澪はその場で倒れ、出血毒と神経毒を受けて動けなくなった。
「ふん、タイパンにとっては日本の友人らしいが、残念だったな」
マンバ含め六天王達は家に帰っていった。




