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閉明塞聡  作者: 大和八木
椋路寺一族との抗争
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2人の器

地震2日目、一向に誰も来ない。イグシステンスからの居場所把握もあまり効果がないようだ。

「くっ、だれもあたいがいないことに気づいてないのか?」

「多分家がだいぶやられてるからみたいですね」

繭は陰からこっそり椋路寺邸をじっと見ていた。家の二階がつぶれてしまっている。

「まじかよ・・・」


3日目、どうやら諒がいないことに気づいたようである。しかし「ほっとけ」というアンチと「助けに行け」という味方の喧嘩が始まっているらしい。

「馬鹿なことをしやがって・・・うぅ」

「大丈夫ですか!諒ちゃん」

「いや、胸が重たい・・・骨一本折れたかもしれない」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


地震が発生してから誰も来ない。諒と繭は絶望に明け暮れながらも互いに生きるする方法を考えていた。

諒は仰向けのまま3日間、おっぱいのせいでほぼ酸欠や多臓器不全で死亡してもおかしくない。繭は自分が「死体」でありながらも人工呼吸でその場を補う。

「ああ・・・、みっともないね、すまない。何かまゆっちにもできることがあれば・・・」

「私は何もないよ。死んでるのですから。少し喉が渇いたぐらいですかね」

「喉が渇いた、か・・・じゃあ最後の力を振り絞って・・・」


うおおおおおおおおおおおおおおおおお!


足がつぶれて千切れかけの状態だが、その痛みをこらえて諒はデカい器を繰り出した。と同時に・・・普通にうつ伏せになることができた。足はほぼ千切れてしまった。

「ぐおお・・・!こ、この千切れた足の血を飲んで渇きをいやしてくれ」

「え!?」

器はデカい銅製のうつわで飲むのも大変だし、諒の血を飲むのも、気が引けてしまう。

「この器は何・・・!?」

「この器は『コピディン』という器らしい、なんかに使った器だけどあたしは知らないわ・・・。まあ、器としてこれしか思い浮かばなかったから」

「大きい・・・ね」

繭は何かを探すかのようなしぐさを始めた。諒の血がある程度溜まったころ、別の何かが流れてきた。

「まゆっち?」

繭は自分の腕を大きく切って肉片をその器に落とし込んだ。

「ななななな何をしている!?」

「これでお互い様だね、一緒に補充しよ」

「・・・・。」

諒と繭はその混ざった血をお互いに顔を近づけて飲んでいた。

繭がわずかに祈っていることを人心掌握で察知した。

お互いに永遠に、一緒に居たいな・・・・----

いきなりその器は光り出した

「な、なんだなんだ!?」


ガッシャーン

その器は真っ二つに割れ、二人の血と肉片は光の粉となって漂い始めた。

・・・いったい、何が起こっている・・・?


その後1時間、棒が繭の頭をどついてきた。

「痛った!」

「おい、やっぱり下に誰かいるぞ!」

救助隊がやっと来たのだ。3日半の時間、地震で埋められた生活は終わったのだ。


「足は千切れちゃったね・・・」

「大丈夫、DNA復元で復活させるから」

諒と繭はお互い病院に運ばれた。



足の復活手術を受けた後、しばらく病院に入院した。

しばらく入院したが、病院からは何も異常がない。しかし二人は不調を訴えていた。互いの肉を食ったせいか、変な器に血を盛ったせいか・・・

特に繭は下腹部に異常な感覚を訴えていた。精神もすこぶるよくなかったこともあり、高校は何度か休校した。

「繭になんかあったのか?諒はケロッと・・・してなさそうだけどさ」

「まったく。しかし何が起こっているかわからないわね。体調は一応お互いに日に日にましにはなってるけど、まゆっちはしんどそうね」

「彼女がいないと謎の組織の情報も集まらない・・・」

・・・・・・。

今回諒が埋められてしまったのは椋路寺一族の分裂による救助隊の減少だった。自分を守る人が少なくなっている。

繭にとってはこの分裂が大きな意味を持つらしいが諒にとってはただの仲たがいだしなぁ、諒派とアンチ諒派みたいなものだ。


何日か繭の症状を探っても下腹部の違和感と倦怠感、熱は・・・死体だからないんだけれども。死体が倦怠感を訴えるのは、何か肉が欲しいのだろうか。

ただ、肉料理を与えてもあんまり症状は改善しなかった。しばらくして倦怠感は治ったらしいのだが、下腹部の違和感は依然として残ったままだ。

「やっほー」

久々に繭が学校に戻ってきた。

「おかえり。下腹部の状態はどんな感じ?」

「まだ違和感が残ってるから、わからない・・・諒ちゃん、一回イグシステンスで見てみてよ」

あんまり学校でイグシステンスを使うのはよくないんだが依頼されるとかなわない。

「わかったよ・・・少しだけね」

諒はイグシステンスで繭の下腹部を見てみると、小さいしこりのようなものができていた。しかしそれは何かをほうふつとさせる形のものである。

「なにこれ、しこり?でも、あんまり取り出す必要がなさそうな気は、するわね」

「え、なんで?」

「・・・なんとなく」

諒は一応察していた。それは昔取り出したはずのなにか・・・、そのなにかは少しずつ成長しているかは私にはわからない。








「やっと諒たちが見つかったんですね」

「まったく、変な喧嘩しやがって、反省しろと言いたいですね・・・」

飯匙倩家では2日目の行動で愚痴をこぼしていた。

「そういえば、こんなものが見つかったみたいです。諒と繭の血が残ってたらしいですよ」

「・・・。」

飯匙倩の家では発掘された鼎の破片を見ていた。

「これは間違いなく『コピディン』だな、しかしどうやってこれを見つけたのか・・・一応ではあるがこれは呪術に使われたものだぞ」

「ということは繭さんはもう・・・」


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