私の席の花瓶の正体
殴った瞬間、私は謎の空間に引きずり込まれた。今度は何だ!?
目が覚めると先ほどの白い空間にいた。まさか、死んだのか?
「あーあ。私、人を呪い殺すには不十分だったのかな?」
背後にだれかいる。しかも初めて見る。このいわゆる「死の空間」にいったい誰が・・・
「大丈夫、何もしないよ」
後ろを振り返った。顔面半分と足先がない。しかし死線を潜り抜けた私にはおびえるものではなかった。
「あなたは誰なの、繭と何の関係が」
「私は、あなたが来る前の繭の唯一の友達・・・そして、あなたや飯匙倩を知る前に自殺して死んだの・・・」
そういえば初めて転校した際、繭の後ろの席には花瓶があった。あれは死んだ人だったのか。
「死んだ、その感じだと自殺に見えるか?」
「ええ、電車に飛び込んだから、顔も足も吹っ飛ばされたよ。このように」
断面はきれいに切断されていた。ん?綺麗に?
そういえば自殺の物理学というのが繭の家にあった気がするが、電車の轢死では断面はつぶれていることが多い。べしゃんこに潰れるのだ。顔は引きずられてそうなったかもしれないが、轢死ではない。
「電車に轢かれた・・・ほんとかな?」
「・・・あまり想像したくないよね。自分の死にざまって」
「でも電車で飛び込んで自殺したのは、嘘ですよね?というか・・・
・・・自殺したって話が嘘ですよね?」
その顔面半分の少女は少し驚いた様子だった。というのもこれは椋路寺家では「市民は危険である」という隠蔽されていた情報があった。
飯匙倩曰く、繭をかばっていた友人がいたそうだ。そして繭を殺しにかかった住民からかばった結果足を鋭利な超波動で切断、サイコキネシスで顔面を引きずられて死んだって話。
この話が本当だったとは。しかしこの子は飯匙倩を知らないというのはいささか疑問がある。飯匙倩ももしかすると私と同じぐらいに引っ越してきたのか・・・?
「はははっ、何でもわかるんだね。だっだら名前を隠しても意味ないよねw 私は「如月ねむ」っていうんだ、もう死んだ身だけど、繭ちゃんは知ってるわ」
「あたいをここに連れてきた意味って・・・なんだ?ここで還魂の術式をしろと?」
「いや、そこまでじゃないんだ・・・」
ねむは大粒の涙をこぼしながらこう言った。
「これからも彼女のことを、助けてやってほしいんだ。繭が死んだら、私みたいな、悪霊になる! 悪霊なんかになってほしくないから、だから・・・!」
「悪霊・・・」
つまりこの世を亡ぼすというのは彼女の精神だったのか。そして親身な人だから、受け入れてしまった。みたいな?
「ごめんなさい、亡ぼすだなんて・・・まだ希望があったんだ・・・。。。 ・・・ごめんなさい。そろそろお別れしないと」
「ちょ、ちょっと待って」
また白い光に包まれ、現実世界に戻った。
「が、・・・な・・・」
繭はその場に座り込み、力なく嘆き出した。
「ああ、なぜ!・・・さっきまでの力がなくなっていく・・・!」
繭はすすり泣いて絶望的な顔をしていっている。目は黒く、復讐も果たせず、完全に自分の存在価値を見失っている。
照夜淸たちには何が起こったかわからなかった。
「何で彼女を止められたんだ、なぜ腹を殴っただけで・・・」
「それにこたえる義理はないわぁ」
諒は肩に手を置いて言った。
「帰るぞ。あたいらの家に」
「・・・・・・」
「帰るんだ。そしたらお前の好きな飯でも食わせてやる」
「・・・うぅ・・・」
静まり返った中、諒は転送魔法を使いながらこう言った。
「お前らは今日死んだと思え。本当の命日はお預けだがな」
諒と繭は紙くずに囲まれて消えた。と同時に周りの絶対領域も崩壊していった。
照夜淸が沈黙を破っていった。
「こ、これで終わったの?」




