NaSSA (Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant) 序章
繭は死んだ。しかしよくわからないところにいる。真っ白な世界。
しかし脳内に流れてくるのは現世の未来。そこには繭にとって最悪の世界が描かれていた。
「いやああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!こんなの、こんなの見たくないよ!」
{しかし、貴方が死んだことで運命はこの道をだどるのだ}
「あなたこそ何よ!何様なのよ貴様!」
{この世界を綴るもの、とでも言っておこう}
「もう世界に何も期待できない、何もかも・・・あなたにも・・・」
{そうだなぁ、変える方法は、教えられなくもないがな}
「えっ、どうするの!教えてよ!」
{貴方が死んだ状態では何もできない。たとえ運命を変えられる君であっても。}
「運命、って・・・」
{貴方はディスティニー持ちであった。付随能力も多くあった。しかしもうお前はこの世にはいない。変えるとするなら、生き残らなければならなかった}
「助けて、助けてよ!せめてここから出して!」
{この空間は椋路寺諒が作り出した異空間。椋路寺諒が死んだら貴方もここから消えるだろう}
「そんな・・・」
天から聞こえる謎の声はどこかへ過ぎ去っていったようだ。また現れるかもしれないし、現れないかもしれない。
だが、繭が見た運命は非情なものだった。一番避けたいことが、自分の死でもたらされるとは。
「諒ちゃん・・・死ぬんだって・・・ごめんなさい・・・」
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絶対値の法則が公にされ、いろいろな"いじめっ子"の人たちが今度は"いじめられる側"となる、そんなつまらない現実を見っところで何になるのか・・・
バルマー脳波でしばらく入院後、何事もなく退院できたのは幸いか。
そして椎奈繭がこの世を去って3か月近くか・・・、彼女が残していった遺言をまとめていくかーーー
ー「一条蛍」と「二条光」は鞦韆一族の2人であるということ。ー
ーそしてその背後に渦巻く2人の賢者がいること。ー
ーそして戦った場合は間違いなく殺されるということ。-
それ以上は特に聞かなかったが、あの目の色は真剣であったこと。何かに恐れている青色の目、絶望の時の黒色の目、いわゆる繭の悲劇だったり石女事件だったりでしか見せてないあの目の色を、会話だけでみるというのもなかろう。
・・・でももう3か月がたったころで何になる。私は彼女が死んだことは認めないし、存在を忘れるつもりはない。ただ、その節目である24日、球磨洋龍はとんでもないことを持ち出してきたのだ。
「諒閣下、少し相談したいことがあります。やや長くなりますがよろしいでしょうか」
「今日は節目の24日。繭っちの話をされても困るのよ。それとも違う案件かしら?」
「これは・・・禁書?」
難しい言葉で書かれている本である。中身は見た感じ、復活の呪文を表しているようである。
・・・そうか、還魂の術式か。それで繭っちをゾンビにして一緒にすればいいのか・・・って
「馬鹿者!恥を知りなさい!」
「どうされましたか閣下!」
「繭っちに還魂の術式を使うだぁ?恥を知りなさい。還魂の術式は自殺者に使えない。成功してもお前みたいなアヴェンジアンデッドにならないんだぞ!」
龍はアヴェンジアンデッドで能力のほかに心や思考回路も育つようなアンデッドだ。しかしアヴェンジアンデッドになるのには条件がある。
・アヴェンジアンデッドになるには
ー死んだときに強い後悔の念とそれを現実化させるための強いエネルギーが必要。繭っちにその念とエネルギーがあるのか。
ー童貞あるいは処女であること。いじめっ子や継父にレイプされてた繭っちが処女とはならない。
ー復活させる術者はそれなりに強いきずながある人物であること。私でいいだろう。
「んで、1と2はどうやって満たすの?」
「わたくしには、この先長くはないという未来が見えます。少なくとも一か月、私はこの世界からいなくなってるでしょう」
よくわからないうえに根拠にならない。確かに龍の能力の一部は未来がうっすらと感じること。死期が迫っているのなら、鞦韆一族の襲撃。つまり我々の死だ。
「それは根拠にならないわね、それと禁術が関係するとはどういう意味なのか」
「わたくしにはよくわからないのですが、この先、何かとてつもないことが起こりそうなのです・・・」
わからないけれども。まあ少し、様子を見てもいいだろう。
一方鞦韆一族と飯匙倩と凜では、今後どうするのかが話し合われている。
「絶対凍結を使った以上はしばらく攻めてはこないでしょう。そう考えるのが筋だと思いますが」
「逆に今からガツーンとやればいいじゃん。奴は半年の札を使ったんだからしばらく何もできないってw」
「どういうときに攻め込むべきか・・・」
「攻め込むって仮定をやめなさいな」
確かに今攻め込めば諒の首を得られるだろうが、今後の根深い禍根となることは確実である。




