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「一番怪しいのはマリア、か……」
呟いたミゲルをマリアがはたいた。
「どうしよう、もうすぐ先生が戻ってくるよ」
マリアを生け贄にしようとは、誰も言い出せない。
その時、セシリアが口を開いた。
「何で誰も言わないのか、不思議だったんだけど………」
そのただならぬ様子に、その場の空気が少し冷たくなった気がした。
「午後の授業、1個だけ休みになったよね? 先生の事情で」
ジャンが顔をしかめる。「そうなのか?」
「うん。全部じゃないわ。たしかラテン語じゃなかったかしら」
「この中で、ラテン語をとってたのは……」
ミゲル、トマス、カトリーヌだ。カトリーヌは、午後は畑作業だと言っていた。
「ミゲルとトマス……何で休講のことを言わなかったの?」
二人は顔を見合わせ、小さな声で言った。
「忘れてた」
「何で忘れられるの?」
「いや……何となく」
「その間、どこにいた?」
「この辺りで、二人で遊んでたけど……」
マリアに向けられていた疑惑の目が、今度は二人に注がれた。
「その頃、既にあんたたちはマカロンのことを知っていた」
マリアが言葉少なに言って、二人の顔をじろりと見上げた。
「待ってくれよ、俺らじゃないって」
「口だけならどうとでも言えるわね」
セシリアも手厳しい。ミゲルとトマスはごくんと息を呑み、視線を泳がせた。それ以外の仲間たちは、次に彼らが懺悔の言葉を口にするのを待ち構えた。
その時、戸ががらりと開けられた。