先輩と二人①
4月18日
ぐちゃぐちゃの、原型が分からないような透明のかたまりがある。
「原口って不器用?」
そう簡潔に告げたのは、白石先輩。
(うっ…だから、細かい作業は苦手なんだよ~)
私と彼は、昼休みにブックカバーの作成、はりつけをしているところなのだが…
なんせ、私は小学校の先生や友達にもドン引きされるほどの作品を作った、不器用中の不器用である。
それを見た彼のグサッと来る、それでいて真実な言葉は見事に私の意欲を低下させた。
「逆にどうしてそんなにうまいんですか?」
さっさとブックカバーを、取り付けている白石先輩を
少し恨めしく思いながら聞く。
「慣れてるから」
そうだ。この人は作家先生だった。
「そこはこうやるんだよ」
ふっと横から手が出てきたと思うと、私の手の上にそれを乗せてきた。
先輩の指、細くてきれいだな。
「折り方が間違ってる」
「す、すみません」
母も、先輩は器用で何でもそつなくこなせると言っていた。
昔の私は、まさかそんな人は居ないだろうと半信半疑で
聞いていたが、今なら分かる。
私たちしかいないし、今なら、小説活動をストップさせている理由を聞けるかな?
「あの、先輩はどうして、水野千鶴として小説を書かなくなってしまったんですか?」
少しの合間、沈黙が訪れる。
(少し、直球過ぎた?)
「…青葉さんから聞いてないのか?」
「お母さんから?なにも聞いてませんが…」
先輩はふっと短いため息をついた。
やがて、ぽつりぽつりと語ってくれた。
お久しぶりです。
少し更新が遅くなってしまい、物語も短くなってしまいましたが、今回も楽しんで頂けましたでしょうか?
素人の作品なので誤字脱字があるかもしれませんが
ご了承ください。
次の更新も少し遅くなってしまうと思います。