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5話 ギルドの初仕事(中編)

「ウヒョヒョヒョヒョ、私が商団代表しょうだんだいひょう行商人ぎょうしょうにんムランドフでございます」


 うわーーー!!

 見るからにあやしそうな行商人が来たーーー!!


 今日のギルドの依頼いらいは、商団の警護けいご

 出発前しゅっぱつまえに商団の代表が挨拶あいさつに来てくれた。


「……初めまして……、私の名前はイラです」


「……イラ?」


 え?

 何だろう、その反応はんのう……


 ……魔王としてのイラという名前は一般いっぱんには公開こうかいされていないはずなんだけど……


 かく魔王の名前は魔族間まぞくかんでしか共有きょうゆうされていない。

 私の場合、人間社会では憤怒ふんどの魔王という呼び方が通常つうじょうだ。


「いえ、何でもありません。今回は私どもの依頼いらいを受けていただき、たいへん感謝かんしゃしております」


「こちらこそ仕事をいただき、ありがとうございます」


 感謝までされるとは思わなかったので、こちらも謝意しゃいを伝えた。


「ムヒャヒャヒャヒャ、何だか、あなたとは長い付き合いになりそうな気がします」


「そ、そうですか……」


 ……今のところ、私はあまり仲良なかよくなりたいとは思わないのだが……

 

「それでは今回の依頼内容を再確認さいかくにんさせていただきますが、私達がとなりの王国の国境こっきょう辿たどり着くまでの警護をお願いしたいと思っております」


「はい、そのように聞いています。……ですが、依頼内容に対して、報酬ほうしゅう多額たがく過ぎるのが少し気にはなっています……」


 ギルドへの依頼の報酬はその仕事の難易度なんいど見合みあったがく支払しはらわれるのが普通ふつうだ。

 難易度は、S・A・B・C・D・Eランクと分けられているが、今回はCランクの依頼内容にも関わらず、何故なぜかSランク相当そうとうの報酬がもらえることになっている。


 ……報酬が高すぎると、依頼を達成した後に、難癖なんくせをつけられて報酬を減らされるのではないかと心配になる……


「……そのように思われて当然とうぜんな報酬額なのは分かっております……。しかし、近頃ちかごろ、このあたりを通る商団を炎竜ファイアードレイクおそうという事件が起こっておりますので、私達の命の保険ほけんとして、報酬をふやしていると思っていただければと思います……」


 そうは言っても、火山地帯かぜんちたい洞窟どうくつに住んでいることが多い炎竜ファイアードレイク遭遇そうぐうする可能性かのうせいなんて滅多めったにないんだけど……

 

「まあ、そう言っていただけるのであれば、報酬は多いに越したことはないので……」


 楽な仕事になりそうだが、今は資金しきんとぼしいので報酬は多ければ多いほどいい。 


「ムヒョヒョヒョ、ありがとうございます」 


 ……それにしても、その不気味ぶきみな笑い方はどうにかならないものだろうか……



「早くモンスター出てこねーかな。久しぶりに暴れたいぜ!」


 道中どうちゅうでオムガがそうボヤいた。


 ……いや、何も出て来ない方がいいのだが……

 

 オムガは好戦的こうせんてき性格せいかくで、っからの戦い好きだ。

 剣技けんぎ実力じつりょく戦仲間パーティーの中で一番なので、戦闘不足せんとうぶそくのオムガ自身のストレス発散はっさんねて、エンと私の剣の訓練くんれんをしてくれている。


「あーあ、炎竜ファイアードレイクが出て来るんじゃねーのかよ……」


 ……やめて、フラグが立っちゃうから………

 うわさをすればかげすっていうことわざもあるし……


「グオォォォォォォ!」


「…………」


 ……気のせい、気のせい……

 けものうなり声なんてよくあることだし……


「グオォォォォォォォォォ!!」


「………………」


 さっきよりも、大きくて長い唸り声。


 ……よくある、よくある……


「グアァァァァァァァァァァァァ!!」


「………あー、これは、来ちゃったね………」


 ズドーーーーーーーーーーン!!!


「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! 炎竜ファイアードレイクだーーーーーー!!」」」


 商団の人達が炎竜ファイアードレイクを見てまどう。


 全身が炎のように赤いうろこおおわれたドラゴン。

 まさに、炎竜ファイアードレイクという呼び名に相応ふさわしいで立ちだ。


 鱗の隙間すきまからあふれ出す炎があたりを明るくらす。

 その姿すがたが私には美しくも見えた。


「っと、感心している場合じゃない。対策たいさくを打たないと……」


「キタキタキターーーーーーーーーー!! 俺に戦わせろーーーーーーーーーー!!」


 オムガが、何も考えずに突っ込んで行った。


 おーーーーーーい、オムガ!!

 死ぬぞーーーーーーーーーー!!


 体格差たいかくさちがい過ぎる。

 勝てるはずがない。


狂戦士バーサーカー!!」


 そう叫ぶと、オムガの身体が赤い光背オーラつつまれた。


身体強化フィジカル・リィーインフォースメント!!」


 同時に、ユーリスが補助魔法ほじょまほうでオムガの身体能力しんたいのうりょく強化きょうかする。


「グオォォォォォォォ!」


 炎竜ファイアードレイクが、オムガを引きこうと右腕をり下ろした。


爆風ブラスト!!」


 オムガが火属性ひぞくせいの魔法をとなえ、爆風ばくふうに乗って跳躍ちょうやくする。


 ズシャッ!!


 オムガは攻撃こうげきをかわしながら、大剣たいけん炎竜ファイアードレイクの腕を切り裂いた。


すごい!!」


 私は二人の戦闘能力せんとうのうりょく素直すなお感心かんしんしてしまった。


「でも、炎竜ファイアードレイクの鱗は物凄ものすご強固きょうこだって、ドラグラは言ってなかった?」


「はい、ですから、オムガの大剣には、私の古代魔法こだいまほう魔法付与エンチャントがしてあります」


 ……何気なにげに凄いこと言っていない?

 ドラグラは古代魔法も使えるの?


 オムガの狂戦士バーサーカーモードと火属性の魔法。

 そして、ユーリスの補助魔法とドラグラの古代魔法。


 ………今更ながら、このメンバーって、なかなかな強者こわものぞろいだよね………


 幻獣げんじゅう達が仲間として残ってくれたことを、再度さいど、私は心の中で感謝した。

5話の最後まで読んでいただきありがとうございます!!

4~6話は、前・中・後編の3話で一つの話になっています。


次回、「ギルドの初仕事(後編)」


今日の10時頃に投稿する予定です。

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