侵攻開始1
ゲートが開き、地球と異世界がつながったあの日から、早くも一か月が過ぎようとしていた。
日本の勇者たちは、東高辻の指揮のもと、富士山の頂上から人の住まない無人島までありとあらゆるところを捜索した。
結果として、ゲートはもちろん、魔物一匹見つけることはできなかった。
そしてそれは他の国の勇者も同じだった。
日本ほど組織立って動く国は少なかったが、魔物の脅威を身に染みて分かっている勇者たちは、自主的にゲートを捜索していた。
それでも見つからないゲートや魔物に、あのメッセージが偽物ではないか、ゲート出現の日時が間違っていたのではないかと思うものが出始めた。
いつまで経っても訪れない脅威に、勇者は気を緩めてしまったのだ。
しかし、ゲートは既に地球上に出現し、魔王軍はすでに何人かの人間を捕まえ、情報収集をし、逐次戦力を投入し始めていた。
では、各国の勇者が自分の国を探しても見つからなかった魔王軍は、いったいどこに侵攻しているのか?
答えはどの国の領土でもない場所、つまり南極だ。
魔王軍はゲートが開いた翌日から早速行動を開始した。
魔王に続いてゲートをくぐったのは、四天王と各部隊の部隊長たち。
「魔王様、ここが地球ですか。
随分と寒いところなのですね。」
口火を切ったのは四天王の一人、ギエルグ。
魔王が生まれた時からの側近の一人だ。
「ああ。
しかし、日がある分ましな方だ。
夜の間はこれよりも寒い。」
「人間は寒さ暑さに弱い種族です。
この辺りに人間は住んでいるのでしょうか。」
「わからん。
ここが特別に寒いのか、これが当たり前なのかもな。
魔神様にお願いして無人島にゲートを開いていただいたから、この島に人間はいない。
早急に人間を捕らえ、地球の情報を集めねばならんな。」