魔王の世界2
数年後、女神大陸の国々を手中に収めた帝国は、魔神大陸をも我が物にしようとした。
属国の有する船を総動員して大船団を組み、大量の武器や物資、兵士を積み海を渡ろうとした。
しかし、念入りに準備された防御線は厚く、強固で、帝国は魔神大陸の地を踏むことすらできなかった。
魔王国は帝国が攻め込んできたタイミングで、反帝国勢力による帝国内部からの切り崩し工作も実行した。
結果として、多くの船、大量の物資、あまたの兵士を失い、属国とした国々が次々と反旗を翻し、帝国は追い詰められていった。
これで平和な世界が戻ってくると誰もが信じた。
しかし、そう上手くはいかなかった。
追い詰められた帝国は、異世界から勇者を召喚するという救世の為の秘術を自らの欲の為に行使した。
救世の為であれば、神官の祈りと定められた手順を踏めば最小限の犠牲で召喚が可能だが、その時は属国から集めていた万にのぼる奴隷達が犠牲となった。
帝国に召喚された勇者たちは、魔神大陸に住む魔王が女神大陸に攻め入り、女神大陸を我が物にしようとしていると吹き込まれた。
また、帝国に敵対する勢力はみな、魔王の息がかかっているとも。
言葉巧みにそう唆し、徹底的な情報統制を行ったことで、勇者たちはその嘘を信じた。
召喚された勇者たちの強さは人間の域を超えていた。
女神の加護を受け、高い魔法適性を持ち、様々なスキルを使いこなす。
さらに、異世界の高度に発展した「科学」という未知の技術を導入することにより、帝国の国力・軍事力は飛躍的に向上し、またも女神大陸の覇権を握った。
その後はよくある人間対魔王の戦いとなった。
科学によって大型化・高速化した船により帝国は魔神大陸に上陸。
勇者たちの活躍もあり、どんどん魔王国内に攻め入った。
しかし、それは魔王国側の作戦だった。
あえて勇者たちを内地へとおびき寄せ、補給線を断絶。
孤立させ、疲弊したところを一気に叩いた。
戦いは数日に渡り、双方多大な被害を出した。
魔王国は四天王と魔王を失い、帝国は全ての勇者と数万の兵士を失った。
魔王国は辛くも勝利した。
アヴァドンは戦死した前魔王の意思を継ぎ、新たな魔王を名乗り、帝国の完全解体を成し遂げ、今度こそ世界に平和が訪れると誰もが信じて疑わなかった。
百数十年後、アヴァドンの生まれた世界は崩壊した。
アヴァドン達は魔神の手助けもあって別の世界へと移り住んだが、そこでもまた勇者と世界の命運をかけて戦い、勝利し、なぜかまたも世界は崩壊した。
「三度繰り返した。四度目はない。
この地球という世界で我々は安寧を得る。」
長い、長い夜が明け、決意を新たにした魔王を、朝日が照らした。