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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第6章 別離
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別離

行き場のない虚しさと悲しみを抱え、真っ暗な闇を永遠に彷徨う。

そんな夢を見た気がした。


「あ、、れ?寝てた?」


時計を見ると、夜の10時を回っていた。


「え!10時?

 6時前じゃなくて!?

 そんなに寝てたの?」


寝入った記憶はない。

仮眠をとるにしても、椅子に座ったままだなんて変だ。

と、そこで初めてテーブルに置かれた記憶玉に気づいた。

記憶玉には私の字でメモが張り付けられていた。


『つらい記憶をどうしても思い出さなければならないと感じた時に、この記憶を開封しなさい』


「何、このメモ。

 ・・・この記憶玉に、つらい記憶を移したっていうことかしら。」


気になる。

午後6時から午後10時までは寝ていたのではと思ったが、おそらくその時間の記憶を記憶玉に移したのだろう。

私が行ったことだけれど、私のあずかり知らないところで記憶が欠落しているというのは、どうにも気になる。


カチャン


「ん?何?」


足を動かそうとして、何かに当たった。

見ると、初級ポーションの瓶が2つ転がっていた。


「・・・・・」


つらい記憶を移した記憶玉。

直筆のメモ。

使った覚えのないポーションが2つ。

これらから導き出される私の行動はおそらく、


「最低2回は記憶玉の記憶を開封したようね。

 そして、そのあまりの辛さに自分を傷つけた・・?

 テーブルか壁にでも頭を打ち付けたのかしら。

 けれど命を絶つほどではなく、ポーションで回復。

 同じことを繰り返さないようにメモを残した。」


よく見ればメモに数滴、涙の跡が見て取れる。

文字も心なしか震えているようだ。


私は記憶玉をアイテムBOXへ収納した。

つらい記憶を思い出さなければならない、と感じる時がどんな時かわからない。

けれど、過去の私が開封するなと言っているのだから、開封しない方が身のためだ。


「そういえば、黒田からもう一週間以上連絡がないけれど、どうしているかしら。

 うまく隠れられていればいいけど。」


黒田のおかげで世界中に拠点を準備できた。

食料をはじめとした物資も十分に備蓄できた。

感謝してもしきれない。

もし魔王軍に追われここへ逃げ延びてきたならば、かくまってもいいと思うくらいの関係性になったと思う。


「ふふ。

 そんなことを思ったら、アトラスが嫉妬するかしら。」


久しぶりに呼ぶ、二度と会うことの叶わない愛しい人の名前。

なぜ今、アトラスのことを思い出したのだろうと不思議に思いつつ、最終確認を行っていないことに気づき、あたふたと動き出した。



ゲートが開くまであと1時間。


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