岩にせかるる滝川の
「何それ!?
そんなの私だって一緒だよ!
私もアトラスに生きていてほしい、戦ってほしくない。
私にそう望むなら、アトラスも私の望みを叶えてよ!」
「ごめん、わがままを言っているよね。
澪の気持ちを無視しているよね。
それでも、どうかお願い。
最初で最後の僕のわがままを聞いてほしい。」
「ずるいよ・・
そんな言い方、ずるいよ・・・」
悲しみとやるせなさから、涙が次から次へとあふれてくる。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、それでもなおアトラスの腕を掴み、懇願する。
「やだ、やだよぅ。
アトラスがまた死んじゃったら、もう今度こそ会えないんだよ?
私が近くにいて、アトラスを守るから。
今度こそアトラスを守り切ってみせるから。
だから、お願い、一緒にいさせて。」
「・・・澪。
澪は、世界を救いたいわけじゃないんだろう?」
「世界も救うよ?」
「世界も、だろ?
僕を守るついでに、世界も結果として救うかもしれないって事だろう?」
それのどこが悪いのだろう?
結果としては同じではないのだろうか。
そう思った私に、アトラスが続ける。
「もし僕と他の勇者と一般市民が同時に危機に陥ったら、澪はどんな順番で助ける?」
「アトラス、他の勇者、一般市民の順番だよ。
アトラスは一番大切だし、他の勇者は戦力になる。
その他大勢は、余裕があれば手を差し伸べるよ。」
「うん。きっと澪は一瞬の迷いもなく、徹底してそう動ける。
でも、この地球でその順番で助けていたら、きっといつか澪は疎まれてしまう。
同じ勇者からも、その他大勢の地球人からもね。」
「別に構わないよ。
アトラスがいれば、それでいい。」
「その気持ちはとても嬉しいよ。
だけど、澪が嫌われる姿は見たくない。
ううん。嫌われるだけならまだいい。
魔王軍のスパイだと疑われて、澪が危険にさらされるかもしれないんだ。
だから・・」