再会2
「アトラス・・・
ずっと、会いたかった。」
いつの間にかボロボロと泣いていた。
「ああ、僕も会いたかったよ。」
一人称が俺から僕へ。
仕草や態度も黒田からアトラスへ変化していた。
間違いない。彼はアトラスだ。そう確信した。
けれど、それならばどうしてすぐに自分がアトラスだと名乗らなかったのだろうか。
「実は、自分がトーマス・アトラスだったという事を思い出したのは一週間前だったんだ。」
私の疑問に答えるようにアトラスは説明する。
「一週間前に女神さまからメッセージが届いたんだ。メッセージがには、
〈今回このメッセージを受け取られた方は、以前の異世界召喚の際、異世界を救済する前に亡くなられた方で、仲間の勇者パーティーが異世界の救済に成功された方です。
異世界で死亡された勇者の方は、地球へ帰還できませんが、世界の救済に成功された功績をたたえ、記憶を抹消し、新たな生命体として地球へ転生する処置を施しました。〉
と書かれていた。
更に、職業やスキルと一緒に異世界で死ぬまでの記憶を貰ったんだ。」
「そうだったのね。」
つまり、黒田として私と接しているときはアトラスの記憶はなく、一週間前に唐突にアトラスだったことを思い出した、というわけなのだろう。
「澪、抱きしめてもいいかい?」
「!!」
黒田の顔で、黒田の声で、アトラスの口調でそう言われ、顔が真っ赤になる。
まだ少し混乱しているが、嫌ではない。
私はそっと首を縦に振る。
「澪!!」
アトラスの腕が私を抱き寄せ、そのまま包み込む。
抱きしめる腕も、匂いも知らないけれど、知っているそんな気がした。
しばらくそのまま彼の腕に抱かれていた。
異世界から戻って以来、一番幸せな時間だった。
このまま時が止まればいい。
月並みだけれど、心の底からそう思った。
そう思ったからか、私の頭は余計なことを考え始めた。