準備は大々的に2
「というわけで、日本の人間勢力のトップは総理大臣になった勇者みたい。」
国会での一部始終を、第一拠点の進捗状況を報告に来た黒田に報告する。
「ずいぶん危ない橋を渡ったな。」
「鑑定は自分の目で見ないと使えないのよ。
安心して、隠蔽魔法と魔道具を使っているわ。
それより、総理大臣が選ばれた時の世間の反応はどうだったの?」
「驚きと、そんな奴で大丈夫なのかっていう意見が大半だったな。
ただ、総理大臣と共に内閣も若返りを果たしたことに称賛の声もあった。
内閣支持率は発足当時から今まで、30%を切ったままだ。」
「そう。」
驚きと不安が世論の大半にもかかわらず、不信任案が出る気配もない。
ということは、魔法あるいは魔道具の影響下にあるのは国会議員とその周辺の人間に限定されるだろう。
彼が勇者でよかった。
もし職業が魔法職(私のような賢者)であったなら、世論の担い手であるマスコミ関係者や、発言力のある有力者、芸能人などにも洗脳魔法をかけていたはずだ。
「・・・東高辻って人は積極的に勇者を集めようとしているみたいね。
あなたに頼んだ物資調達から、私にたどり着けると思う?」
「どうだろうな。
魔法関係はさっぱり分からんが、俺たちは表向きは総合商社を名乗ってる。
個人が集めるにしてはバカみたいな量だが、会社として扱うにはそう多い量じゃない。
しかもちょっと調べれば裏稼業の人間がやっているって分かるだろう。
警察に目を付けられることはあっても、お嬢さんが裏にいるとは思わないんじゃないか?」
「魔王軍に寝返ったわけでもない、ただの魔法使いをわざわざ探し出そうとしないことを願うしかないわね。」
協議の結果、今後の方針に変更はなく、第一拠点の完成後に藤谷を拉致。
同時に他の拠点の建設と、物資の調達を進めていくことになった。
その後は前述の通り、無事に藤谷を拉致。
異世界と地球とをつなぐゲートが開くまで、10カ月を切った。