宿願3
「アンタなんか、魔法を使うまでもないわ!」
6年前の無力な私じゃない。
異世界で鍛えた体術も、スキルも、他の勇者の推定2倍のステータスも加算されている。
腕を振り上げこちらに襲い掛かってくる藤谷の動きなど、止まって見える。
私は一歩踏み出し、藤谷の腕を避け、当て身をくらわした。
「ぐっ!」
そのまま足を払って地面に倒し、背中を踏みつけ、馬乗りになり、右手をひねり上げる。
「ううっ、い、痛い!やめてくれ!」
さっきまでの威勢はどこへやら。
情けない声をあげて藤谷が懇願する。
「はあ?やめるわけないでしょう。
どうしてアンタの言うことを聞かなきゃいけないのよ。」
腕をひねり上げる力を強める。
藤谷が痛みに声を上げるが、ここは特別監房室。
誰にも声は届かない。
「さて、あんまり長居すると映像のすり替えが大変になるから、そろそろ行こうか。」
「ど、どこへ?」
うつぶせに組み敷かれた状態から、恐怖と痛みに歪んだ顔をこちらに向けて藤谷が尋ねる。
「決まってるじゃない。
アンタに復讐するために準備した場所よ。
安心して、あの時みたいに特殊部隊が突入して復讐が途中で終わらないように、誰も入ってこられないようにしてあるから。」
にっこりと、満面の笑みでそう告げる。
藤谷の顔がみるみる間に青ざめてゆく。
「最低3回殺してあげるから。
覚悟しとけよ、このクソ野郎!」
振り上げた右こぶしで藤谷の頭を殴りつける。
手加減はしたつもりだったが、積年の恨みが加算されたのか、頭蓋骨が陥没し、おびただしい量の血液が流れ出てしまった。
「あ、やば、思い切りやりすぎた。
死んでは・・・ない・・かな?
ポーションをかけておこう。」
さすが高級ポーション。
傷は跡形もなく治り、呼吸も復活した。




