宿願2
「ふ、ふふふ、はははは。
久しぶりねぇ、藤谷。
6年、いえ、18年ぶりだわ。」
「何をおっしゃっているんですか?
一昨日お会いしたと思うのですが。
・・・それに、なぜいきなり声が変わったのでしょう?
まるで女性のような声ですが?」
違和感を超えた変化に、本を置いて藤谷が身構える。
私は後ろ手に扉を閉めると、そのまま一歩藤谷に近づいた。
藤谷は立ち上がらず、そのまま部屋の隅の方へ後ずさる。
「そんなに逃げないでよ。
今すぐ殺したりしないからさ。」
「いつもの刑務官サン・・・ではないんですかね?」
「はは、勘がいいじゃない。
忘れちゃった?
あんなに私を殺したそうにしていたじゃない!」
そう言って魔道具の変身を解除する。
あの事件から6年。
高校生だった私は大人になったが、藤谷には私が誰だかすぐに分かったようだった。
「あ、あははは。
あの時の娘さんじゃないですか!
魔法ですか?手品ですか?
まったく気づきませんでしたよ!」
「魔法だよ。
といっても、理解できないだろうけどね。
どうやらあんたは勇者経験者じゃないようだし。
さて、どうして私がここに来たのか、分かるわよね?」
「復讐ですか?
いやはや、よくココに潜入できましたね。
すごいです。
いいでしょう、その復讐受けて立ちましょう。」
私があの時の無抵抗な小娘だと気づいた藤谷は、さっきまでの警戒を解き、すっと立ちあがった。
ひょろりと長い。
あの時の印象そのままの姿だった。
「私が女だから甘く見ているんでしょう?
腕力で勝てると思っているのね?」
「見たところ武器らしい武器を持っていないようですしね。
そちらが復讐をしたいように、私もアナタを殺し損ねて以来、ずーっとアナタを殺したくってたまらなかったんですよ!」
言うや否や、藤谷が襲い掛かってきた。