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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第5章 宿願
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準備は密やかに7

特別監房の入り口には鍵の付いた扉があり、そこから2メートルほどの廊下を進むと監視室の扉がある。

さきほど前任の刑務官と鍵をやり取りしたのは、この監視室の扉の前だ。

入り口の扉の鍵は、刑務官と上官がそれぞれ所持しているが、この監視室の鍵と特別監房室の鍵は1つしかない。

交代の際に受け渡す決まりになっている。

監視室は六畳ほどの広さで、テーブルと椅子、各種監視カメラのモニター、モニターとつながったパソコンがあった。

監視カメラには、監視室と藤谷が収監されている特別監房室をつなぐ廊下も映っている。

担当刑務官であれ、藤谷と接触できるのは日に3度の配膳と、朝夕の点呼のみ。

先ほどの交代が午後九時。

もう夕食の配膳は終わっている。

よって、今から私が特別監房に向かえば、通常とは異なる動きが撮影され、一週間後の上官のチェックで何かしらの調査が入る可能性がある。


「監視カメラのデータをすり替えるには、このパソコンにこのUSBメモリを差し込むだけでいいって言ってたけど、大丈夫かな。」


USBメモリを差し込んだパソコンに特段変化はない。

少し心配だが、いつも同じ風景が録画されているだけだから、すり替えは簡単だと言っていた黒田を信じるしかない。


「特に異常ありませんでした、か。」


監視室と特別監房室をつなぐ廊下に通じる扉を開けようとして、ふと先ほどの前任の刑務官の言葉を反芻する。

黒田の調べによると、藤谷は収監された当初は暴れたり、大声をあげたりすることが頻繁にあったらしい。

しかし、ここ一年ほどは何も問題を起こさず、静かに過ごしている。


「そりゃそうよね。

 死刑じゃなくて、無期懲役になったんだから。」


恩赦。

ただ元号が変わったというだけで行われた恩赦によって、3人もの命を奪った藤谷の罪が軽くなった。

発表を聞いて愕然としたのを覚えている。

当時の高何とかっていう法務大臣に減刑に反対する意見書を送ったが、結果は何も変わらなかった。


「でも、今になって思えば、無期懲役になってくれてありがたかったわ。

 おかげで私の手で復讐をやり遂げられるのだから。」


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