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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第5章 宿願
74/135

準備は密やかに5

第一拠点。

国内の人気のない場所に建てた、地上2階地下3階建ての一軒家を模した拠点。

もちろん地上部分は目くらましで、メインは地下空間。

広さは地上の数倍はあり、地下1階は地下2階、3階を守るための防衛機構となっている。


地下1階の迷路のように入り組んだ通路の壁は、音もなく遠隔で動かすことが可能で、侵入者を袋小路へと誘い込む。

強力な電磁波により化学兵器は使い物にならず、銃火器による破壊は、物理攻撃を軽減する魔方陣を予め仕込んでおくことでほぼ無効化できる。

さらに、落とし穴や毒ガスなどの化学兵器、魔法による攻撃が発動される罠なども多数設置している。

え、こんなものを作れるのかって?

そこは裏社会のツテと、莫大な金と、貢献度ポイントショップと魔法のおかげだ。


地下2階は居住空間と管制室。

張りぼての地上設備と違って、日の光も差し込まない地下に、場合によっては数十年ひきこもっていなければならないのだから、地下の居住空間は快適さを追求した造りになっている。

内装、家具、寝具、家電に至るまで最高級品を揃え、それらが経年劣化した時に備え、替えも多く準備した。

インフラが生きている間はそれらを利用するが、魔王軍の侵攻によってそれらが止まったとしても、太陽光あるいは魔法・魔道具を利用した水力発電ができるように設計している。

そして、管制室には、地下1階のありとあらゆるところに設置された監視カメラを確認できる巨大モニターと、壁や電磁波や罠を操作可能なコンソールがある。

さらに、拠点の周辺を警戒するために配置したカメラやドローンもこの管制室から操作できる。


そして、この第一拠点の肝が地下3階の牢獄だ。

藤谷を閉じ込め、拷問し、実験し、殺して生き返らせて何度も殺すための場所。

地下3階と地下2階の間の扉は三重になっていて、最も地下2階に近い扉は魔法による施錠を施している。

地下3階は大きく、独房、実験室、拷問室に分けられる。

独房はその名の通り藤谷を収監するための部屋。

人一人がやっと足を延ばして寝られるかという広さで、トイレ以外何もない。

自殺や思いがけず死んでしまうという事故を防ぐため、部屋の中の人物が死にそうになったときにのみ回復魔法が発動するように魔方陣を仕込んでいる。

この仕掛けは、隠し持った毒をあおって死のうとする暗殺者に、毒の苦しみだけ味合わせることができるんだよ、と国指定拷問官から教わった。

そして、実験室、拷問室もその名のとおり藤谷で実験したり、藤谷を拷問したりする場所だ。

地下3階ということで音が漏れるとはまず考えられないが、用心には用心を重ね、全室完全防音となっている。


「素晴らしいわ。

 急いで作ってもらったのに、注文以上の出来ね。」


黒田に案内され、完成したばかりの第一拠点を見て回った私はそう感想を述べた。


「これでやっと準備が整ったわ。」


やっと、やっとだ。

地球時間で6年。

異世界にいた時間も含めれば、18年も経った。

心から待ち望んでいた機会がやっと訪れた。


「ふ、ふふふ、ははははは。」


嬉しそうに、狂ったように声をあげて笑う私を、黒田が悲しそうな表情で見つめていたが、私はそれに気づくことはなかった。


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