合縁奇縁といいますが、奇縁でしょう
日本は平和だな、としみじみ思う。
普通に暮らしていれば、命を狙われることも、誰かを殺すこともめったに起こることじゃない。
異世界から帰ってきたばかりのころは、常時警戒常時戦場の癖が抜けなくて、変な目で見られていたな。
「いや、変な目で見られていたのはいつものことか。」
つい独り言ちる。
私は異世界に行く前から、よく冷たい人だと言われていた。
自分でもその自覚はあったが、2度の異世界召喚を経験して、やっぱり自分は冷たい人間なのだと実感した。
某1名を除き、召喚された人達は皆、善良な人達だった。
常に他人にやさしく、情にあつく、正義感があり、人に手を差し伸べることを躊躇しない人ばかりだった。
全ての人がそうであるとは思わないが、そんな彼らと自分を比べると、自分の考え方は根本から違っていた。
私は、私と私が大事だと思う人だけが大切で、それ以外は割と“どうでもいい”のだ。
“どうでもいい”人達から助けを求められても、無条件で手を差し伸べたりはしない。
私が手を差し伸べるのは、助けないことで私が何かリスクを背負わなければならなかったり、助けて何か利益を得るときのどちらかだ。
かつて2度異世界の為に戦ったが、どちらも最初はやる気がなかった。
ただ魔法や異世界に興味があったから、自分に害のない範囲で好奇心を満たす程度に戦っていた。
でも、何年もその世界で生きているうちに、パーティーの皆や異世界の皆が私の大事な人になっていった。
私は、自分の大事だと思うものに対しては、執拗に大事にするし、それを害そうとする者には、全力で対抗する。
だから魔王軍との戦いに身を賭して、自爆魔法なんてものも使ってしまったんだ。