居場所
藤谷の居場所が分かったと黒田から連絡があったのは、私がまだ世界中を飛び回っているときだった。
突然通信用の魔道具が鳴った。
「俺だ。今大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。何かあったの?」
「藤谷の居場所が分かった。
〇〇県の××刑務所の特別監房というところに収監されている。」
「え、もう分かったの?
こんなに早く分かるなんて、さすがね。」
「居場所だけじゃないぞ。
行動パターンもある程度把握した。
まず、刑務作業はなし。
食事も何もかも特別監房の中で済ませるから、外に出てくることは滅多にないようだ。
それから、担当の刑務官は本人やその周辺に信者がいないか入念に確認された4人。
ローテーションを組んで常にだれか一人が看守室で監視を行っている。
その看守ですら藤谷に接触できるのは日に三度の食事を運ぶときと、朝と夜の点呼の時だけのよう
だ。」
「そこまで調べてくれたのね。
本当にありがとう。
私が戻るまでに、その4人の刑務官について追加でいろいろと調べておいてもらえる?」
「それは構わねぇが、買収するのは難しそうだぞ?」
「買収なんて不確かなことはしないわ。」
「・・魔法か?」
「ええ。
藤谷を拉致するためには、看守の誰かに成りすまさないといけないでしょうから。
身長や指紋といった身体データが欲しいの。」
「拉致するのか?その場で殺すのかと思ってた。」
「もちろんそのうち殺すけれど、簡単には殺さないわ。
エリクサーを使えば生き返るのだから、最低3回は死んでもらう予定よ。」
「そうか。」
兄と父と母の復讐だ。
家族が味わった恐怖と苦痛を藤谷にも与える。
等倍ではなく、10倍20倍にして。
「本当なら今すぐに日本に戻りたいところなのだけど・・・
思ったより沢山あるのね、核兵器って。
探し出すだけで一苦労よ。
だから、私が戻るまで藤谷が脱走したり、死んだりしないよう見張りもお願いできるかしら?」
「お安い御用さ。
・・・道中、気をつけろよ。」
「ええ。そっちもね。」