計画を立てる1
私は全てを黒田に話した。
過去に2度異世界へ召喚され、それぞれの世界を救ったこと。
1年後に異世界と地球を繋ぐゲートが出現し、異世界から魔王率いる魔王軍が攻めてくること。
私を含む勇者経験者にその旨が通達され、この地球を守るべく力が与えられたこと。
そして、私は3度目の世界、地球を救うつもりがない、勇者として動くつもりがないこと。
私の最終目標は、誰にも見つからずにひっそりと生きていくことだということを。
「・・・にわかには信じがたい、な。」
「当然の反応ね。
けれどこれは私の妄想じゃない。
証拠に、そうね、魔法でも見せましょうか?」
「・・・空を飛んだりできるのか?」
「簡単よ。」
重力を操作するか、風魔法で体を浮かすか、あるいはそれらを併用することで空を飛ぶことができる。
ちなみに、他人も空に浮かべるなら風魔法を使う方が簡単だ。
「探知遮断結界発動。」
〈風よ我と彼を浮かべよ〉
おなじみの魔道具による青い光とともに、狭いアパートの一室に突如風が吹く。
「う、うお!?」
テーブルやベッドはそのままに、私と黒田の体だけがふわりと宙に浮いた。
「どう?」
「は、ははは。
こりゃ信じるしかないわな。」
「話が早くて助かるわ。」
身体が床についてもなお、黒田は興奮冷めやらずといった様子だった。
「それなら、あれか?
瞬間移動とか、ファイヤーボールとか、アイテムボックスとかも使えるのか?」
「詳しいのね。」
「ん、ああ。
まあ、隠しても仕方ないから言うが、漫画もアニメもラノベも好きだぜ。」
裏社会の人間も一皮むけばただのオタクだったようだ。
「ふふ。なんだか親近感が湧くわね。
さっきの質問だけど、もちろん全部使えるわ。
ただ、さっきも言ったけれど私はこの世界を救う気がない。
魔王軍からも人間からも見つからず、ひっそりと生きていきたい。
だから今は魔法を使って目立つのは避けたいから、大々的には見せてあげられないの。
ごめんなさい。」