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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第4章 私が世界を救わない理由
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信者

「藤谷 星一か。

思い出した。あの事件で唯一生き残った少女がいたと報道されていたが、それがお嬢さんだったのか。」


こくんと頷いて下を向いた私の目から、涙がボロボロと零れ落ちる。

泣き止もうとしても全然涙が止まらない。

見かねた黒田がそっとハンカチを差し出してくれた。


「ありがと。」


あふれ出る涙をそれでぬぐう。

黒田はさっき私がそうしたように、落ち着くまでじっと見守っていてくれた。


「見苦しい所を見せちゃったわね。

 ハンカチありがとう。

 鼻水ついちゃったから、新しいものを買って返すわ。」


「気にするな。

 それに見苦しくなんてない。」


「・・ありがとう。

 ずっと誰にも話せなくて・・。

 少しだけ心の整理ができたような気がするわ。」


「そうか。そりゃよかった。

 なあ、その藤谷は見つけるだけでいいのか?」


「ええ。

 どこの刑務所の、どの独房に入っているのか。

 それを突き止めてほしいの。」


「犯罪被害者であるお嬢さんには、知らされていそうだがな。」


「・・・藤谷の居場所は秘匿されているの。

 信者がいる、から。」



スナッフフィルム殺人事件は、センセーショナルに報道された。

家族三人が惨殺され、突入した特殊部隊によって今にも殺されそうになっていた少女が救出された。

それだけでも話題としては十分なのだが、犯人が三人を惨殺するシーンがダークウェブで生配信されていたという事実が明らかになるとより報道が激化した。

さすがにスナッフフィルムそのものを報道するわけにはいかなかったが、誰もが閲覧できるインターネット上にそれが出回るまでにそう時間はかからなかった。

削除要請と再アップロードのいたちごっこが行われている間に何が起きたのか。

それは、一部の(私から言わせてもらえば、頭のおかしい)層に熱烈な信者が発生したのだ。

信者たちは何故か藤谷を神のように崇拝し始めた。


どこのどの何が崇拝に値するのか、一切理解ができないが、彼らはただ崇拝するに飽き足らず、拘置所や裁判所に押しかけ、藤谷を一目見ようと、藤谷に一目見てもらおうと暴動を起こした。


もちろん警官隊によりすぐ鎮圧されたが、その様子が報道されると活動は拡大し、より過激に活発化していった。


結果、裁判は日程、裁判場所非公開、傍聴禁止、裁判員裁判の中止に至り、関係者にはかん口令が敷かれた。


それでもなお、信者たちの信仰(?)は続いたため、藤谷がどこにどのように収監されたのか、その情報は秘匿されるに至った。



「信者に情報が漏れないようにかなり秘匿されているはずだけど、できそう?」


「蛇の道は蛇っていうだろ。

 まかせろ。

 それより、本当に見つけるだけでいいのか?」


その言葉に含まれた意味は、もちろん分かっている。


「心配してくれてありがとう。

 見つけてくれるだけでいいわ。

 復讐は自分の手でやるから。」


「・・どうやって?

 さすがにお嬢さんをムショの中に手引するのは難しいぜ?」


「わかってる。

 それも含めて話さなきゃならないことがあるの。

 信じるか信じないかは、あなた次第よ。」

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