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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第4章 私が世界を救わない理由
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私が世界を救わない理由8

最後は母だった。

目の前で息子と夫を無残に殺された母の心は、もう壊れていた。

ビデオカメラの前に引きずられても、ナイフで腕や足を切りつけられても、何の反応もなかった。

男はそれが面白くなかったらしい。

もっと抵抗して、泣き叫んでほしかったのだろう。

勝手に激昂した男は、母に馬乗りになり、首を絞めて殺した。


ぴくりとも動かない母の腕。

肩で息をする男。

次は私。

そう思った。

目が合った。刹那。



ガシャンッ


ダンッ



何かによってリビングの窓が勢いよく割られてすぐ、耳をつんざく爆音と眩い閃光とがリビングを覆いつくした。

特殊部隊が使用したスタングレネードだった。


後に知ったことだが、男は撮影した映像をリアルタイムでネット配信していたらしい。

ネットといってもいわゆるダークウェブでの配信だったのだが、そのあまりのリアルさに通報が相次ぎ、警察が配信場所を特定。

交渉に応じる相手ではないと判断し、特殊部隊による突入が強行された。


音と光で無力化された男はあっけなく取り押さえられた。

男が連行され、兄と父の死体が収容され、母には救急救命措置が施された。

けれど結局息を吹き返すことはなかった。



これが世にいう、スナッフフィルム殺人事件の全容であり、この犯人こそが、藤谷星一ふじや せいいちである。


そして、ひとり生き残った少女としてあまりにも有名になってしまった私は、自分の本当の名前を名乗ることができなくなった。

楠 月佳とは、国が用意した偽名だ。


この世界に、私も、私にとって大切な人も存在しない。

存在しなくなった。


これが、私がこの世界を救わない理由。



----回想終わり----

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