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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第4章 私が世界を救わない理由
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私が世界を救わない理由6

【スナッフフィルム(Snuff film)】

スナッフとはスラング(俗語)で殺すという意味を持つ。

つまりスナッフフィルムとは、殺人映像、殺人の様子をおさめた動画のこと。



ビデオカメラの前に転がした兄に馬乗りになった男は、それまでずっと被っていたフードとマスクを外した。

黒い長髪に、目が二つ、鼻が1つ、口が1つ、耳が二つ。

見た目は人間。

けれど、初めて見る男の顔は醜悪に歪み、口元はから狂気が漏れ出し、まるで悪魔のように見えた。


「お集りの皆サン、これからご覧いただくショウは正真正銘ホンモノでございます。

どうか心ゆくまでご覧ください。」


兄に馬乗りになったまま男はビデオカメラに向かって深々とお辞儀をした。

右手には私を脅したナイフを握ったまま。


兄は、私たちの目の前で刺し殺された。

最初は肩のあたりだっただろうか。

上手く刺さらず舌打ちをしていた。

痛みに兄がもがくとさらに舌打ちをして、腹のあたりにナイフを振り下ろした。


「ん゛――!!!」


兄の声にならない悲鳴がこだました。

男がガムテープを二重三重に貼っていた理由はこれだったのだ。

一戸建てとはいえ、大人が声の限り叫べばさすがに周囲に異変が伝わる。

男はそれを恐れていたのだろう。


「いいですね。もっと苦しんで魅せてください。」


男はそう言って兄をめった刺しにした。

ナイフを抜くたびに鮮血が飛び、カーペットがみるみる間に赤く染まっていった。

激高した父がガムテープ越しでも分かるような叫び声をあげ男に襲い掛かろうとするが、結束バンドで手足を拘束されていて、もつれるように前に倒れてしまった。

それでもなお拘束を解き、兄を助けようと父がもがいていると、


「それ以上暴れるなら、こんな風に娘さんの耳も切り落としましょうかね。」


そう言って、切り落とした兄の耳をこちら側へ投げてよこした。

兄以外の全員の肩が震えた。

母はぼろぼろと涙を流しているし、父は顔を真っ赤にして怒って、でも私の為に抵抗をやめ、私は耳を切り落とされてもピクリともしない兄から目が離せなかった。



「ちっ、ちょっと早く殺しすぎたな。」



こと切れた兄を画角の外に追いやりながら、男がそう呟いたことを鮮明に覚えている。


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