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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第4章 私が世界を救わない理由
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頼みたいこと

「さて、コーヒーを飲んで落ち着いたところで、本題に入っていいかしら。」


すでに平静を取り戻し、テーブルをはさんで向かいに座っていた黒田がその言葉に応える。


「ああ。今日はそのために来たんだからな。

 俺にできることなら何でも言ってくれ。

 あの時より出世したから、できることも増えたぜ。」


「頼もしいわね。

 早速だけど頼みたいことは2つ。

 1つはとある人物がどこにいるのか、所在を明らかにしてほしい。

 2つ目は大量の物資の調達を代行してほしい。」


「3つ目は?」


「それはまだ思いついていないから、保留で。

 それか、物資調達が大変だと思うから、それに2つ分のお願いを使ったってことでもいいわよ。」


「いや、3つは3つだ。保留のままでいい。

 それで、その探してほしいやつっていうのは誰だ?」



黒田の言葉で、しんと空気が凍る。



テーブルに置こうとしたコーヒーカップが、テーブルとぶつかってガタガタと音を立てる。

私は唐突に震えだした右手を、左手で押さえつけた。


「おい、大丈夫か?」


「・・・ええ。大丈夫。」


嘘だ。大丈夫ではない。

その男の名を口にしようとしただけでこの様だ。

その男のことを思い出すだけで、体中の血が凍るような恐怖と、体中の血が沸騰するような怒りにまみれる。


「ほんとに大丈夫か?

 真っ青になったり、真っ赤になったり。言いづらいなら言わなくても。」


「いえ、大丈夫。

 ちょっとだけ時間をちょうだい。」


情けない。

異世界で過ごした時間も含めると、18年も経っているのに。

魔物を何万と屠り、魔王を2度倒し、今や魔法を使える身となったというのに、あの恐怖は、あの怒りは、未だ私の中に巣食っている。


すう、はあ、と大きく深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせる。


「・・・探してほしいのは、藤谷ふじや 星一せいいちという男よ。」


「藤谷星一・・・なんか聞き覚えのある名前だな。」


「そうでしょうとも。

 あいつは、あの男は、私の両親と兄を殺した殺人鬼なんだから!!!」



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