鬱憤を晴らす3
ほどなく会議室3に到着し、課長がドアに鍵をかける。
わざわざ自分で邪魔者が入らない状況を作り出してくれるとは、ありがたいことである。
「楠、お前自分の立場を分かってるのか?!」
さっそく課長が口を開く。
「分かってますよ。分かっていないのは、アンタでしょ?」
今まで下に見てきた部下にアンタ呼ばわりされ、課長の顔がみるみるうちに真っ赤になる。
ギャースカ何かを喚きだしたが、私はそれを無視してアイテムBOXから1つの魔道具を取り出した。
「音遮断結界発動」
立方体をした青い魔道具から青い光が溢れ、会議室を覆うように広がるとふっと消えた。
「あ?何だそれは。」
課長には私が空中からいきなり何かを取り出し、それが一瞬光ったように見えたはずだ。
「魔道具ですよ。と言ってもわからないと思いますが。」
「ボイスレコーダーか何かか?こっちに寄こせ!」
パワハラの証拠をとられると思ったのか、魔道具を奪おうと手を伸ばしてきた。
「だから、触るなって言ってるだろうが!」
その手をさっとよけ、近づいてきた課長の顔面に躊躇なく右ストレートをぶち込む。
殴った瞬間、歯が2,3本空中に飛んだ。
「ぐはっ。」
派手な音を立てながら課長の体がテーブルと椅子をなぎ倒す。
1,2メートルは転がっただろうか。
こんなことは昨日までの私なら物理的に不可能だったが、勇者としての力が付与されたおかげで腕力、というか物理攻撃力が格段に上がっている。
魔法使いは物理攻撃力が低いと言われるが、並の魔物程度なら殴り倒せるくらいには鍛えた。
しかも2度世界を救ったボーナスとして、全ステータスが約2倍。
ただの人である課長に渾身の一発を打ち込むと死んでしまうので、これでも手加減したほうだ。