鬱憤を晴らす1
翌日、目を覚ますとカーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいた。
ぐっすり眠れたおかげですこぶる調子がいい。
時計を見るととっくにお昼を過ぎていた。
「もうすぐ探知遮断結界の効果が切れるわね。」
性能はいいのだが、この持続時間の短さが玉に瑕である。
もう一度張りなおそうかと思ったが、ひきこもる前にやらなければならない事があったことを思い出した。
「そうだ、魔法を使えるようになったし、あのクソ上司にイロイロとお礼をしなきゃね。」
この恨み、晴らさでおくべきか。いや、晴らさずにはいられない。
妄想の中では何度か殺ったが、とうとうそれを実行に移す時が来た。
いや、もちろん殺しはしないが、それなりのお礼をしなければ気が済まない。
シャワーを浴び、これが最後になるであろうスーツに袖を通し、携帯の電源を入れる。
すると、すさまじい数の不在着信が表示された。
ほぼ5分ごとにかかってきているのではないかと思うほどの量だった。
「うわ、全部会社から。
暇なのかな。
安眠のために電源を切っておいてよかった。」
不在着信に特に折り返す訳でもなく、もう一度電源を切ってバックに入れ、普段履かないヒールの高い靴を履いて駅に向かう。
家から会社までは通い慣れた道だ。
電車は朝の混雑が嘘のように空いていた。
適当な席に座り、電車に揺られること十数分。
さらに駅から徒歩数分。
見慣れたビルが目に入った。
「ああ、このビルごと爆破してしまいたい。」
会社の前でそう物騒なことを呟いて、自分がどれだけストレスを溜めていたのか改めて感じた。
本当に実行に移す前に、やはりあのクソ上司にお礼をしておかなければならない。