準備開始
とりあえず3度目の世界--地球は救わないと決めた。
誰にも見つからずひっそりと、息をひそめて生きる道を選んだ。
「そうと決まれば、いろいろと準備が必要ね。
ひっそり見つからないように生きていくためには、どうしたらいいかしら?」
想定するのは最悪のケース。
つまり、魔王軍が勝利した場合だ。
まず間違いなく勇者は皆殺しにされる。
自らを脅かす勢力を残しておく阿呆はいない。
となると、魔王軍は草の根を分けて、地球の隅から隅まで殺し残した勇者がいないかどうか探すだろう。
「隠れ住む拠点は複数用意した方がいいわね。
国もばらして、都会や田舎、砂漠の真ん中とか山の中とかもありね。
相互移動の魔方陣を予め敷いておけば、何かあったときにすぐに逃げられるかな。」
とはいえ、物資を調達するために街に出て、魔族に見つかりました。
なんてことになれば笑えない。
物資の確保も必要だ。
幸い、アイテムBOXが使えるようになるので食料が腐る心配も、消耗品が劣化する心配もない。
「あと60年?くらい生きるとして、何がどれくらい必要なんだろう。
1人分じゃ心配だし、2人分用意する?
何があるかわからないから、10人分くらい用意しておこうかな。」
ふと、明日から利用可能になるショップのことが頭をよぎる。
「もしショップで色々購入できるならいいんだけどな。
お金ないし・・・。
それに、60年×10人分の物資を買い集めると目立つからなぁ。」
合法違法を問わなければ、魔法を使った物資確保は容易だ。
大型スーパーや物流倉庫に移動して、根こそぎアイテムBOXに入れてしまえばいい。
だが、なによりも優先されるのは【ひっそりと誰にも見つからずに生きていくこと】だ。
【誰にも】の中には、魔王軍だけでなく、他の勇者や政府、一般人のすべてが含まれる。
魔法の存在しないこの世界で、そんなことをすればすぐに見つかってしまう。