三度目の世界は救いません
「世界中から求められ、馬車馬のように働いて、得るのはわずかな感謝だけ?
はは。ブラックな会社で仕事してる方がマシかも。
少なくとも命の危険はないし、直接罵ってくるのはあのクソ上司だけだもんな。」
その瞬間、わずかながらにあった使命感が立ち消え、気持ちが一気に冷めていくのを感じた。
どうせ勇者は私以外にもたくさん存在するのだ。
私だけが頑張る必要はない。
ただ、地球が魔王軍の手に落ちてしまっては困る。
地球は魔族に支配され、勇者は皆殺しにされ、人間は迫害され、奴隷となり、食料となるだろう。
生態系や気候も変わり果ててしまうかもしれない。
「はあ、人間側に付くにしろ、魔族が勝利するにしろ、どちらにせよ明るい未来は待ってないってことかぁ。」
明日まで30分を切った。
どうしようか。
答えを出すのにそんなに時間はかからなかった。
この世界は私に対して優しくなかった。
つらいことばかりが私の人生を占めていた。
私はこの世界が好きではない。
むしろ、嫌いだ。
守りたいと思うような大切な存在もいない。
この世界を救う価値を見出せない。
「だから、私は地球を、3度目の世界は救いません!
魔王軍に見つからないように、1人でひっそり生きていくことにします!」