メッセージ3
それは予想だにしないメッセージだった。
送り主はさしずめ、2度の異世界召喚に携わり、加護を与えてきたあの女神といったところか。
「ん?あれ?
今日はたしか20XX年の7月14日。
メッセージにあるゲートが開く日はちょうど1年後の明日だ。
どういうこと?」
メッセージには続きがあるようだった。
≪なお、今回このように事前に告知致しました理由は、以下の3点でございます
1.事前告知、事前承諾、意思確認なしに異世界へ召喚された勇者の方々から、苦情があったため
2.進行予定の魔王軍の脅威度がSSクラスであり、事前準備がなければ地球を守ることが困難であるため
3.貢献度ポイントを利用したショップの試験導入のため≫
「お、おお、なんだか情報量が多いな。
1の理由は何となくわかる。召喚という名の拉致、だからね、あれ。
しかも、世界を救うまで元の世界に戻れないし、死ぬリスクが高いのだから、苦情くらいでるわ。」
実際、1度目の異世界召喚の時にあのクソ勇者がギャンギャンわめいていた。
しかし、それよりも気になるのは最初のメッセージにあった
≪このメッセージは、異世界に召喚された経験のある方全員にお送りしております≫
という文言だ。
この文言から推測するに、1度目と2度目、どちらのパーティーメンバーにもこのメッセージは送られていると考えられる。
ふと、2度目の異世界で私を庇って命を落としたシーフの姿が脳裏をよぎる。
いつの日だったか、シーフなのにこの金色の髪が目立って困るんだよ、とこっそり教えてくれた。
それなら、と、認識阻害魔法を改良して、髪の色だけを変える魔法を創り出した。
危険な場所への潜入任務が多いから、物理障壁や魔法障壁をストックしたお守りも渡した。
私が人生で唯一愛して、その気持ちに応えてくれた人。
目の前でその命が奪われて、それでもなお魔王軍へ立ち向かえたのは、わずかな可能性に賭けたから。
それは、世界を救いさえすれば、勇者は全員生きて元の世界に還ることができるのではないかという、そんな儚い願いに似た可能性。
けれど、こちらの世界に戻ってきて今まで、彼から連絡がきたことはない。
本当の名前も、住所も連絡先も教えあっていたのに。
そして、私も彼に連絡しようとはしなかった。
怖かった。
こちらに還ってきていないという事実を受け入れることが何よりも怖かったから。