招かれざる客2
「9時ですか。その時間はまだ会社で残業していたので・・」
これは嘘ではない。
男を発見したのが、10時頃。
そして家に帰りついたのは10時半を回るか回らないくらいかの時間だった。
「そうですか。」
「あの、犯人はまだ捕まっていないのですか?」
「残念ながら。鋭意捜査中です。」
「そう、なんですね。」
不安を顔に出して見せる。
すると、後ろにいた警官が何やら小声でもう一人の警官に指示を出した。
「・・お一人暮らしですか?」
はい。と答えかけて、警官の視線の先に男の靴が転がっているのに気付いた。
さっきの指示はこれについて聞けということらしい。
「はい。普段は。
ただ、昨日、終電がなくなったからと、日付が変わる前に兄から連絡がありまして。」
指示通り頭から毛布を被って寝ている男に視線を移す。
「昨日結構飲んだみたいでずっと寝ているのですが、起こした方がいいですか?」
警官たちは軽く目配せをして頷くと、
「・・お兄さんはこの辺りでお仕事を?」
「いえ、たまたま歓楽街の方で飲み会があったらしいのですが、盛り上がってしまって、気づいたら
終電がなくなっていたと言っていました。」
発砲事件・・おそらく男あるいは、男を襲撃した犯人によるものだろう。
男を見つけた場所と、話題にあげた歓楽街は私の家を挟んで正反対の場所にあり、距離もそこそこ離れている。
賭けだった。