魔王軍作戦会議1
ーストラリアの北で行われた日米豪合同訓練を皮切りに、魔王軍は世界各所でゴーストアタックを繰り返し、人間間の争いを助長させ、混乱に乗じて各所へスパイを送り込んでいた。
それもこれも、一年という短くも長い準備期間のたまものだった。
「それでは、ただいまより地球侵攻作戦会議を始めます。
まず始めに、オーストラリア政府軍司令から報告です。」
魔王の側近、四天王のギエルグが会議を仕切る。
「報告いたします。
先日実施しましたアメリカ海軍へのゴーストアタックですが、前々回同様、勇者と思しき存在により、効果的な戦果を挙げることができませんでした。
対物理結界により、現代兵器のほとんどが無効化された模様です。
多くの艦船が集まっていたのは、勇者に守らせるためだと考えられます。」
「人間の兵器を利用して、人間の戦力を集中させる。
作戦がうまくいったようですな。
こちらの損耗はどれくらいですかな?」
「人間側の反撃による損耗はゼロですが、空間転移魔法の不手際と、機械トラブルにより航空機を3機失っています。」
「それだけの損耗であれだけの戦果をあげられているなら、大成功と言ってよいでしょうな。」
キャスタルが満足そうにうなずく。
事実、魔王軍側が失った航空機の数十倍の航空機を人間側は失っている。
人的被害も相当数だろう。
「今後も人間側の戦力を足止めするために、ゴーストアタックを逐次実行いたします。
私からの報告は以上です。」
オーストラリア政府軍司令と入れ替わりに会議室へ入ってきたのは、諜報部隊の隊長だった。
「諜報部隊から、勇者の動向について報告させていただきます。
混乱に乗じ、各国へ人間に扮した同胞を派遣しました。
先ほどのゴーストアタックを防いだ勇者を含め、36名の勇者を特定しております。」
「これまでと比べると、ずいぶんと多いですね。」
ウァラテリアの言葉に皆が頷く。
「これまで勇者として敵対した存在は、1つの世界で多くても6人でした。
それが、すでに6倍・・・。
まだ他にも勇者はいると考えていますか?」
「はい。
我々諜報部隊は、勇者と確定した者の他に、勇者“らしき”人物としてさらに50名ほどマークしております。」