実験開始6
血まみれになった床を見て、流れ出た血液のおおよその量を計算する。
「違うわね。
この出血量なら、昨日のように意識を失ってもおかしくない。
つまり、失った血液を100%再生することはできないけれど、ある程度は再生できている・・・。
これは要検証・・と。」
「う、ううう。」
「はいはい。
輸血してあげるからちょっと待っていなさい。」
アイテムボックスから輸血パックを取り出そうとして、手を止める。
「あら、在庫がもうないじゃない。
貢献度ポイントショップで買っておかなきゃ。
藤谷は、AB型のRh+だったわね。
どの血液型でも輸血はできるけれど、わざわざ別の血液型にしなくてもいいか。」
数ポイント分の輸血パックを確保して、輸血を再開する。
数十分ほどすると徐々に顔色が良くなり、意識もはっきりとしてきた。
「そろそろ実験を再開しましょう。
手首の切断は完全に再生されたから、次は肘下ね。」
手首を切り落とす前には見られた反抗もなくなり、途中に何度か輸血を挟みつつも実験はスムーズに進んだ。
「肘、肩からの切断はともに完全再生。
それ以上の欠損は完全再生とならず、ね。
足は膝からの切断は完全再生だが、片足まるまる一本を再生する力は高級ポーションにはない。
再生できる体積が決まっているのかしら?
再生能力が体積に依存しているとすると仮定するならば、臓器の再生は高級ポーションで可能・・・?
構造の複雑さも加味される・・・?」
実験を重ねれば重ねるほど検証すべき事項が増えてゆく。
本来なら魔物相手に実験を繰り返して、最後に人間で確認しようと考えていた。
しかしよく考えれば魔物と人間は全く異なった生き物だ。
臓器の種類や位置も、再生能力も比較にならない。
「結果としては、無駄足を踏まずに済んだわね。
実験体がいてくれて本当によかった。
これからもよろしくね。」
にっこりと微笑んで、私は次の実験を開始したのだった。