実験開始5
実験2日目。
「今日は高級ポーションの効果を検証するわよ。
まずは、欠損部位の再生についてね。
どの程度なら再生するのか、細かく検証しましょう。」
まな板の鯉ならぬ、実験台の藤谷の顔には恐怖と諦めが8:2ほどの割合で現れている。
「じゃあ、腕からやってみましょう。」
力を入れて右腕を体から離そうとしない藤谷の抵抗を一笑に付し、無理やり引きはがす。
用意しておいた別の台に引きはがした右腕を乗せ、固定する。
「まずは、指、次に手首、肘、肩の順で切り取っていくわよ。
大丈夫、毎回ポーションで治癒するから。
はい、じゃあ、親指いきます。」
人参を切るように藤谷の右手親指を切り落とし、そのまま、人差し指、中指、薬指、小指と順番に切ってゆく。
指が1つなくなるたび叫び声をあげながら身をよじるが、詰め物をした口に猿轡をかませているので声にならず、固定器具のせいで逃げることは許されない。
「この状態に高級ポーションをかけると・・五指全て再生ね。
では次は手首を切り落としてみましょう。」
キレイに修復された右手の手首をスパッと切り離す。
切り口からブシュッと勢いよく血液が噴き出す。
「動脈を切ると出血が派手ね。」
冷静に観察しながら、高級ポーションをかける。
血まみれの切り口の先に、まっさらな右手首が再生された。
「この調子で全身を細切れにしては再生させるといったことを繰り返した場合、それはもう別人なんじゃないかしら?
あれ?これって何だったかしら?
えーっと、て?あ、テセウスの船!
そうそう、テセウスの船よ。
同一性が保持されているのか・・・・
まあ、人間なんて毎日細胞が死んでは新しく生まれて入れ替わっているのだから、関係ないかしらね?」
特に同意を求めたわけではないのだが、目線を合わせた藤谷は力なくうなずく。
顔色がやや青い。
「あ、もしかしてまた出血多量?
高級ポーションでも流れ出た血液は再生できないのかしら?」