実験開始4
「あらあら、大丈夫?
指の骨が折れているじゃない。」
普通の人間が普通の人間を殴れば、双方怪我をするが、私は普通の人間ではない。
そこらの勇者の倍のステータス、つまり、高い物理防御力を持っている。
長い拷問生活で一般人以下の腕力しかない藤谷が私を殴れば、こうなると分かっていた。
折れてしまった指を抱え込むように体を折り曲げ、痛がる藤谷を見て、
「自ら進んで怪我をするくらい、ポーションの実験が気に入ったの?」
にっこりと微笑みながら、声をかけた。
「ひっ!
も、申し訳ございません!」
流れるような動作で土下座をする藤谷。
何度も見てきた光景だ。
「まったく、これで何回目なの?
反抗しても無駄だって、忘れちゃったのかしら?
ゴブリン以下の知能しかないの?
ああ、それだとゴブリンに失礼かしら。」
「いえ、私はゴブリン以下です!
ですから、どうか・・」
「そう、ゴブリン以下なのね。
じゃあ、駆除しないとね。
奴らは放っておくと繁殖して、悪さばかりして迷惑なのよね。
それ以下なのだから、あなたもさぞかし迷惑をかけるのね。
ああ、もう迷惑以上の事をされていたわ、ね?」
土下座をしている藤谷の頭を掴み、そのままひねり上げ、目を合わせて微笑む。
私の微笑みは怒りと繋がっていることを理解している藤谷は、顔を引きつらせながら謝罪の言葉を口にしようとする。
「ああ、いいのよ、謝罪なんて。
そんなものは何の意味もなさないのだから。
何度殴っても、何度殺してもこの憎しみは消えそうにないわ。」
掴んでいた頭を壁に向かって投げる。
1メートルほど宙を舞った体は、鈍い音と共に壁にぶつかり、藤谷は苦悶の声をあげた。
「明日も実験だから今日はこれくらいにしておいてあげる。
食事は抜きよ。
わかったらさっさと独房に移動しなさい。」
「は、はい・・・。」
その後は反抗する様子もなく、実験一日目は終了した。