実験開始3
指の欠損や体の一部が抉れた場合に使用する高級ポーションは、最も使用頻度が高い。
貢献度ポイントショップで購入する場合、納品までに1週間かかるエリクサーと違い即時に手に入り、使い勝手が良い。
「欠損した組織の再生・・・。
やっぱりこの実験の肝は、高級ポーションとエリクサーね。
まあ、でも焦る必要もないし、検証の続きといきましょう。」
その後、熱々に熱した鉄板を押し付けた火傷の治療を行ったが、結果は予想通りだった。
中級ポーションの実験も初級ポーションの実験とあまり変わらなかったので割愛する。
「ここまでは予想通りね。
そして、初級、中級ポーションでは、流れ出た血液を再生できない、と。
反応がなくなったから焦ったわ。」
そう言って台の上で眠っている藤谷に視線を移す。
藤谷は、中級ポーションの実験が終わるころに出血多量により意識を失ってしまった。
すぐさま鑑定すると「出血多量状態」という結果が出たため、慌てて輸血し、なんとかエリクサーを使わずに済んだ。
輸血パックが1つ終わるころには、土気色だった顔にほんのり血色が戻っていた。
「今日はここまでにしておきましょうか。
ほら、起きなさい。
今日の実験は終了よ。」
拘束を外し、眠っていた藤谷にそう声をかけるが反応がない。
もう一度声をかけても起きる気配がなかったので、頬を叩く。
「う、うう?」
「目が覚めたみたいね。
今日の実験は終了よ。
独房に戻りなさい。」
「・・・・はい。」
藤谷は、一瞬何が起きたのかわからなかったような顔をしたが、すぐに自分の置かれている状況を思い出したのか、のそりと起き上がった。
「今日の実験による傷は全て治しているけれど、何か不調があれば申告しなさい。」
「特に、ありません。」
「わかったわ。
それじゃあ戻るわよ。」
そう言って藤谷に背を向け、診察室へと続くドアを開こうとした瞬間、
「も、もうやってられるか!」
大声で叫びながら、藤谷が殴りかかってきた。
ごん、という音がして、藤谷の右こぶしと私の頭がぶつかる。
避けられなくもない攻撃だったが、避ける必要はないし、なにより、
「い、いてぇ!」
怪我をするのは藤谷の方だ。