実験開始2
淡々と記録をつける私とは対照的に、藤谷は一週間ぶりの痛みと恐怖に震えていた。
何故自分がこんな目に遭わなければならないのか。
この人の形をした悪魔は、どこまで自分を痛めつければ満足するのか。
痛い、怖い、痛い。
声を出せば、より痛く、より苦痛を与えるように傷つけられる。
逃げたい、けれど、体はびくともしない。
そんな思考だけが駆け巡り、目から涙が流れた。
「泣くほど痛かった?
まだまだ序の口よ?」
「ううう・・・」
「たった一週間で苦痛耐性を失くしてしまったの?
まあいいわ。
そのうちまた耐性が付くでしょう。」
恨みがましい視線を無視して、私は次の実験の準備を始めた。
「次は火傷ね。
魔法・・・だとやりすぎるから、ライターと熱した鉄板でいいかな。」
いまだ恨みがましい視線を送ってくる藤谷の目の前で、アイテムボックスから取り出したライターに火をつける。
カチッという音と共に炎が灯る。
「どこにしようかしら。
足・・・腕?
あ、そうだまずは髪の毛にしましょう。
初級ポーションで燃えてなくなった髪の毛を復元できるかしら?」
ライターの炎を目から頭へと移動させる。
藤谷は、炎を避けようと頭を逸らせるが、首につけられた固定器具のせいで頭の位置は変わらない。
「動かないで。
間違えて顔を燃やしちゃうから。」
ジュっという音がして、藤谷の短い髪の毛が燃える。
たんぱく質が燃える特有の匂いが実験室に漂った。
炎は髪から髪へと燃え移ってゆく。
「んんん゛―!!」
数分で藤谷の頭が火だるまになる。
「これ以上やると実験室が燃えちゃうわね。」
延焼する前に魔法で水を生成し、消火する。
髪の毛はすべて燃え落ち、火傷した頭皮が露出していた。
「この状態の頭に初級ポーションをかけると・・・髪の毛は復元されない。
頭皮の火傷は・・軽度の火傷は治っているけれど、治り切れていない部分もあるわね。
傷の面積と治癒効果は反比例しているのね。
・・・身体の欠損を再生する高級ポーションを使ってみると、オーケー、髪の毛が再生したわ。
頭皮の火傷も完治ね。」