実験開始1
「そうそう、それでいいの。
大人しくしていれば痛いだけで済むわよ。
じゃあまずは、ポーションの効果の確認から始めましょう。」
アイテムボックスから、初級、中級、高級ポーションとエリクサーを取り出す。
私の感覚としては、簡単な切り傷や打撲は初級ポーションで治る。
病院で処置してもらわなければならない切り傷や、骨にひびが入った程度の外傷は中級ポーション、手術が必要な大けがや複雑骨折、内臓破裂、体の一部欠損のような場合は高級ポーションで治癒・再生が可能だ。
エリクサーを使えば死亡(異世界っぽく言うなら、HPが0になった状態)から1分以内なら蘇生可能、半身欠損状態から完全回復ができる。
ただ、これはあくまで私の使用した感覚であって、検証したわけではない。
今後、貢献度ポイントショップが使用できなくなる可能性も考慮して、各種ポーションの限界を調べておくことは必要だろう。
「初級ポーションから始めましょうか。
切り傷を、まずはナイフで、その次は鋸で。
切り傷の後は打撲の治療。
そうだ、火傷の治療もしてみましょう。」
藤谷の右袖をまくり、腕を露出させるとカタカタと震えていた。
その腕に私は躊躇なくナイフをふるう。
細く黒ずんだ腕に、ぴっ、と赤い線が引かれた。
5cmほどの切り傷から、血液がにじみだし、腕に垂れる。
「皮膚表面の切り傷。
初級ポーションを使うと・・・瞬時に跡形もなく治癒、と。
流れ出た血液はそのままね。」
観察した結果を書き留めてゆく。
「次は鋸ね。
初級ポーションの治癒の域を超えているような気がするけれど、様々な形状の刃物で試してみないとね。
あ、そうだ、刺し傷も検証してみましょう。」
今度は左袖をめくり、小型の鋸で二の腕当たりを切りつけ、アイスピックでひじの下あたりを刺した。
「ん゛―!!!」
さすがに痛かったのか、藤谷が苦悶の声をあげる。
鋸で切った腕からぼたぼたと出血している。
「鋸で切った傷に初級ポーションを使うと・・・不完全な治癒。
血液をぬぐってみましょうか。
・・・結構傷が深いわね。
もう一度初級ポーションを使うと・・・治癒したけれど、さっきのナイフと比べると時間がかかったわね。
アイスピックによる刺し傷は、一回で治癒と。」