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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第8章 それぞれの戦い
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実験3

「あなたの拷問はとりあえず今日でおしまいよ。

 どう?いいニュースでしょう?」


「・・・!!??」


私の言葉にフリーズしていた藤谷だったが、その言葉が自分の最も望んでいた言葉だと理解すると、暗くどんよりと沈んでいた瞳に光が灯る。


「え、ほ、本当ですか?」


「もちろん本当よ。」


私が笑顔でそう告げると、藤谷の表情が明るくなり、痩せこけた頬が赤く染まった。


「ただ、悪いニュースもあるわ。」


その言葉に藤谷の体がびくっと震える。


「・・・・・悪いニュースは、な、何でしょうか?」


「あなたには実験の被験者になってもらうわ。」


「実験の被験者ですか?」


「そうよ。

 実験内容は実験の際に説明するわ。」


そう言って私はアイテムボックスから掃除用具を取り出した。


「被験者が不健康だと正しいデータが取れないの。

 まずはこの掃除用具を使って部屋を掃除しなさい。

 そのあと体を洗って、食事をして、布団で寝なさい。

 実験は一週間後からよ。」


「!は、はい。ありがとうございます!」


いったいこれの何が悪いニュースなのだろうか。

これまでで一番良い状況じゃないか。

口には出さないが、藤谷の表情からそう思っていることは明白だった。


いそいそと掃除を始める藤谷を監視しながら、私は拷問の師匠だった国指定拷問官の言葉を思い出していた。


曰く、人間はどん底に突き落とされれば、その場で耐えようと必死にもがく。

どん底から這い上がってきた人間は、つらかった記憶を捨て、新たな幸せに縋る。

拷問でも同じだ。

どうしても口を割らない奴らは、苛烈な拷問を施した後、人並みの生活に戻す。

そして人並みの幸せを味合わせて、また拷問をする。

口を割ればまた人並みの生活に戻れるぞと言ってな。

すると一度目の拷問を耐えた一流と言われる暗殺者でも、大概の奴は心が折れる。

ふり幅はでかい方がいい。

その方が心が折れるのが早いぞ。と。



「つかの間の幸せを噛みしめるがいいわ。」


私は藤谷に聞こえない程度の声でそう呟いた。



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