対峙7
許してください、ごめんなさいと喚く冬馬を無慈悲に燃やしては回復させ、燃やしては回復させ、時に氷漬けにしてみたりすること数時間。
「まあ今日はこれくらいにしておいてあげるわ。
藤谷に会いたいって言うなら、もう少し燃やすけど、どうする?」
魂の芯まで恐怖が浸み込んだようで、最初とは打って変わって、虚ろな目をしてふるふると首を横に振った。
「もう、か、いいえ、藤谷には何の興味もありません。
失礼な態度をとって申し訳ございませんでした。」
深々と土下座をする冬馬を冷ややかに見降ろしながら、不安も感じた。
日本の勇者を束ねている奴が、こんなに弱くて大丈夫なのだろうか、と。
「ねえ、あんたそんなに弱っちいのによく日本の勇者をまとめていたわね。
何か魔法を使ったの?」
「いえ、何も使っていません。
私は勇者たちのまとめ役を務めていましたが、戦闘力で選ばれたわけではありません。」
「・・・まあ、強さは戦闘力だけじゃないしね。
あんたが旗頭なら、日本という国がバックに付く。
動きやすくなるし、支援も受けやすくなるわね。」
「はい、ご推察の通りかと。
・・・ゲートが日本には存在していないと分かってから、私のもとを離れる勇者が多くいました。」
「担ぐにはいい神輿だったわね。
まあいいわ。
あんたにはもう少し神輿でいてもらう。」
「どういうことでしょうか?」
どういうことか理解しかねるという顔だ。
「ゲートは絶対に地球に現れているわ。
ただ見つけられないだけ。
魔王軍の目撃情報がないという事は、彼らはとても慎重に動いている。
けれど何もしていないという事はないでしょう。
いつか、思いもよらない形で先制パンチをくらうのは人間よ。
あんたはその立場をフルに活用して、他の国の動向を探りなさい。
スパイを送り込むのでも、新しく人工衛星を飛ばすでもいいわ。
違和感レベルの兆候を掴んで、迅速に動けるようにしておきなさい。」
「先ほどは、魔王軍とは戦わないとおっしゃっていましたが・・・」
「私が魔王軍と戦うなんて言ってないわ。
兆候を掴んだら日本の勇者とか他の国の勇者とかに情報提供して、戦いたい奴が戦ったらいいんじゃない?」
「・・・・・承知しました。」
ここで非難したり口答えしたりすればもう一度燃やされる。
冬馬は言いたいことをぐっと堪えた。