対峙4
冬馬の剣戟が扉ごと私を切り裂こうとする。
扉を壊されては困るので、扉を蹴り、外へ弾かれた扉で冬馬の体勢を崩す。
「いきなり家を壊そうとしないでもらえますか!」
後ろによろめいた冬馬に向かってそう叫びながら、アイテムボックスから身の丈はあろうかという大盾を取り出し、そのまま冬馬に向かって突進する。
「ちっ!騎士職かよ!」
腐っても勇者。
突進をバックステップでかわし、距離をとった。
どうやら私の思惑通りに勘違いしてくれたみたいなので、その勘違いを助長するために利き手に剣を取り出した。
盾も戦うには大きすぎるので、ふた回りほど小さくて、魔法防御力が高い物に換えた。
「あまり戦いたくはないのですが、そちらはやる気満々みたいですね。」
「ふん。
その余裕もいつまでもつか楽しみだな。
神に殺していただけなかったかわいそうな小娘よ。」
冬馬の言葉に怒りが湧くよりも早く体が反応した。
踏み込み、全力で地面を蹴って一瞬で冬馬との距離を詰め、振りかぶった剣を躊躇なく上段から振り下ろした。
ガキィンと金属と金属がぶつかる音が響く。
何とか私の剣筋に反応した冬馬だったが、ステータスの差からか、そのまま後ろに吹っ飛んだ。
「神、ですって?
あんたまさか、あいつの信者?」
土にまみれ、仰向けに転がった冬馬に対して怒気をはらんだ声でそう尋ねる。
「ぐっ・・
なんだ、この強さは。」
「質問に答えなさいよ。」
状況が把握できずに混乱している冬馬のもとへ歩いて近寄る。
「ひっ!
く、くるな!
ほ、ほ、炎よ我が敵を穿て!」
苦し紛れに冬馬が放った火球を盾で受ける。
ボンと派手な音だけを残して、火球は消え去った。
魔法職でないとはいえ、この程度の火力しか出せないところを見ると、冬馬が救った異世界の魔王軍はニルヘムと同等かそれ以下のようだ。