東高辻冬馬の計画4
「鍵解除」
冬馬は迷うことなく地下に通じる扉まで歩き、魔法で鍵を開けた。
階段を降り、冬馬は特別監房へ続く扉の前に辿り着いた。
特別監房の入り口には鍵の付いた扉があり、そこから2メートルほど進むと監視室の扉があり、常時1名の刑務官がその監視室でモニターをチェックしている。
ガチャッ
冬馬が特別監房へ続く扉を解錠し、中に入ると同時に監視室の扉が開き、慌てた様子で刑務官が飛び出してきた。
「なっ!
どうして扉が開いているんだ!?
モニターの誤作動じゃないのか?!」
刑務官からしてみれば、誰もいないのに勝手に扉が開くという怪現象を体験しているようなものだ。
驚き慌てるのも無理はない。
怪現象を確認するべきか、先に上司に報告すべきか刑務官が迷っている間に、冬馬は音を立てないよう廊下を歩き刑務官との距離を詰めた。
「ご苦労様。」
冬馬は当て身をくらわせ、刑務官から意識と監視室・特別監房室の鍵を奪った。
「ああ、やっと神にお会いできる!」
冬馬は監視室を通り過ぎ、廊下を進み、特別監房室の前に立った。
心臓の高鳴りは最高潮を迎え、鍵を持つ手が震える。
カチ、ガチン、ガチャ
やっと鍵穴に鍵が刺さり、そのまま特別監房室の扉を開いた。
扉の先には机に向かって本を読む藤谷星一の姿があった。
「おお、神よ。
ご尊顔を拝し奉り、恐悦至極に、存じ奉ります。」
冬馬は膝を折り、額を床につけ深々とお辞儀をした。
目の前のそれが、藤谷星一本人だと思って。