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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第7章 進軍
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東高辻冬馬の計画2

冬馬が大学を卒業した翌年、2つの事件が起きた。

一つ目は、冬馬の兄が突然の交通事故で帰らぬ人になったことだ。

跡取りを亡くした父と母の悲しみ様はすごかった。

父が涙を流す姿を初めて見たほどだ。

ただ、冬馬にとってみればこの上ないチャンスだった。

東高辻家には兄と冬馬の二人の子供しかいない。

つまり、兄亡き今、父の地盤を継ぎ、政治家となるのは冬馬しかいないのだ。

冬馬は「兄を亡くして悲しむ弟」を上手に演じて見せた。


二つ目は、スナッフフィルム殺人事件が起きたことだ。

冬馬は藤谷による中継をリアルタイムで視聴していた。


「ははは、すげぇ。

 マジでやってるじゃん、これ。」


異世界で多くの死を見てきた冬馬には、それが本当に起きていることだとすぐに分かった。

しかし、通報するわけでもなく、むしろどんどん惹き込まれていった。

蘇るのは異世界で斃してきた魔王軍の断末魔。

聖剣で魔物の肉を裂くあの感触。

冬馬のうちに眠っていた加虐性が藤谷と重なり、羨望は崇拝へと変化した。


藤谷が逮捕されて、冬馬は他の信者と共に暴動に参加しようとしたが、寸前で思いとどまった。

それは良心や道徳心といったものからではなく、打算と悪知恵を働かせた結果だった。


3年後、藤谷の死刑が確定し、翌年元号が変わり、恩赦が実施されることが決定した。

通常、殺人を犯し、死刑判決が出た者に対して恩赦は行われない。

藤谷もその例に漏れず、死刑執行の日を待つのみだったが、冬馬はこの機会を逃さなかった。


息子が信者であることが世間に露見すれば、お前が失脚するのは明らかだ。

兄亡き今、俺が信者だとバレて、お前が失脚すれば、東高辻家の未来はないぞ。


そう言って当時法務大臣だった父を脅し、ありとあらゆる手段を使って藤谷に恩赦を施したのだ。

冬馬の父はこのことがきっかけで体と心を壊し、翌年亡くなってしまう。

結果として、冬馬は父の地盤を継ぎ、衆議院選挙に立候補。

魔道具の力を使って政党の有力議員たちを洗脳し、総理大臣になった。



そして今、冬馬は特別監房の前に立っていた。


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