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三度目の世界は救いません  作者: 金木犀
第7章 進軍
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東高辻冬馬の計画1

魔王軍が密かに準備を進める中、勇者たちはというとすっかり警戒を解いてしまっていた。


東高辻も例外ではなく、日本国内にゲートが存在しないことが明らかになってからは、組織立って動くことは無くなっていた。

かわりに、彼は兼ねてからの計画を実行に移すことにした。

この計画について話す前に、少し東高辻冬馬について話すとしよう。



彼は有名政治家の父と名家の子女である母の間に生まれた次男だった。

幼いころは父に憧れを抱き、自分も政治家になるのだと夢見ていたが、現実はそう上手くはいかなかった。

有名大学を優秀な成績で卒業した兄と違い、冬馬はごく平凡な人間だった。

父も母も冬馬を愛してくれたが、父の地盤を継ぐのは兄だと両親も周囲も口をそろえた。

年頃になった冬馬には、それがとてつもない屈辱であったが、到底兄には敵わないと理解する自分がいた。

冬馬が17になったそんな折、彼は突然異世界へ召喚された。


勇者として世界を救ってほしい。


期待されるのはいつだって兄だった。

それが今や自分に向けられている。

冬馬はパーティーを率い、魔王軍に立ち向かった。


向けられる期待のまなざし、称賛の声、魔王軍の断末魔。

全てが彼を酔わせた。

勇者として人生の絶頂を味わってしまった。


しかし、魔王を打倒し、地球へ帰還した彼に待っていたのはもとの惨めな生活だった。


剣も魔法も使えない、ただの平凡な高校生。


だれも自分に期待しない。


だれも自分を称賛しない。


誰かを傷つけることは許されない。


絶頂からの転落。


彼は良くない連中とつるむようになり、大学受験に2度失敗した。

父も母も兄も、変わってしまった冬馬にどう接すればよいかわからず、腫れ物に触るような扱いをした。

その扱いがますます冬馬を苦しめたが、次の受験で大学に合格しなければ勘当すると言われ、冬馬は3度目の受験でなんとか大学に合格し、2度浪人しながらも大学を卒業した。



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