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わたしの街が混沌としている件  作者: 村前慎太郎
3/10

ナヤの居酒屋

ここは、とある王国の街、ダイノソー。

私が友人と共に立ち上げた新興の街である。


国王殺害未遂事件があったその日の晩、私ことあいぽんはナヤが経営する居酒屋で飲んでいた。

ナヤの居酒屋はこの街だけでなく、国に関わる情報も集まるようになっている。

彼女の情報網は半端なく、この国のスパイをしていると思われるシアの情報もナヤからの情報なのだ。


私は、その居酒屋で二人の商人と飲んでいた。

一人は私の旦那であるダンス。

もう一人は、商人仲間のたぬきさんである。


たぬきさんは、この街でも古株で5本の指に入る商人である。

この街には、武器防具を売ってほしい、作ってほしいという依頼がたくさん入る。

特定の商人に入る指名ではなく、街全体に「懸賞」として入ってくる依頼であるため、

その依頼を誰がこなすかは基本的に早い者勝ちとなっている。

たぬきさんはその懸賞の依頼達成回数が断トツにすごい。

彼にこなせない依頼はないと断言してもいい。


「仕事のあとのビールはうまうまですねぇ!」

「そうね!最高ね!ちょっとダンス、居酒屋でゲームばっかりしないの!」


お酒そっちのけでゲームをしているダンスを置いといて、たぬきさんと世間話を続ける。


「そういや、例の新人さんって国王のこと殺しかけたんでしょ?w」

「うん、わたしとダンスその現場にいたw」

「どうして彼はお咎めなしなんでしょう?」


確かに最もな話である。

いくら馬鹿とはいえ、一国の国王に刃を向けたのだから、良くても死罪なはずである。

悪けりゃ一族まとめて云々な話になってもおかしくない。


「あー、そりゃなんかカラクリがあるっぽいぞ?」


ゲームをしていたダンスも興味があるとばかり会話に参加しはじめた。


「カラクリ?」


初めて聞く変態さんの生態系に、たぬきさんもワクワクしている様子だ。


「うん、前に変態さんの店の前で聞いたんだけど・・・」


ダンスが聞いた話では、彼の店には毎日ものすごい数の客が来るそうで、

そのものすごい数の客が少しずつ情報を落としていくと情報量がかなりのものになるらしい。

それを聞きつけた他国の人間やこの国の重要人物が足を運ぶ。

そして変態さんの店はド〇・キホーテのようにゴチャゴチャしていて、密会するのにも最適だということ。

だから普段できない話もあの店ではできる。それ目的に来ている客も多い。

何より驚きだったのが、変態さんはそこで話されたことをすべて聞いていて理解しているということだ。


「そりゃ、この国が重宝するわけだw」

「このナヤの居酒屋と同じくらい情報量、いや下手するとここよりも上の可能性がw」


たぬきさんとダンスが面白そうに目を輝かせている。


「変態さんが何をしても罰せられないのはそういうことか・・・」

「まじであの人謎だなw」


私とダンス、たぬきさんが納得してしまう。

すると居酒屋の扉がギィという音をたてて開く。


「こんばんは。」

「あら、いらっしゃい。」


入ってきた人物にナヤが接客する。


「投資資金持ってきました。32億あります。」

「「「はぁっ!?」」」


居酒屋で飲んでいる客のほとんどが椅子を蹴って立ち上がった。

私たちも例外なくその投資資金の額を聞いて立ち上がったのだ。


「あ、みなさんこんばんは。」

「がまさん、今なんて!?」

「いや、投資の資金持ってきたんですよ。」

「金額おかしくない?聞き間違い??」

「間違いないですよ?32億です。」


たぬきさんとダンスは開いた口がふさがらないようだ。


「なんで??もっと自分のお店に使えばいいのに!」

「いや、レベル足りなくて使いどころがないんですよ。」


だからと言って、10億単位のお金を投資するか・・・!?

紹介が遅れたけど、彼の名前はがまたつ。

全身緑色で髪の毛がない。そしてグラサン。

彼は名前こそ普通であるが、深層心理で変態なのだ。

そして自他ともに認める街での投資額ナンバーワンである。

彼が貢献した職人や施設は非常に多い。

彼がいるから、この街が発展してきたと言っても過言ではない。

そしてがまたつさんもこの街で5本の指に入る資産家でもある。


「そ・・・そうなのね・・・?」

「そうなのです。」


ナヤがあまりにも多額な投資に目を回しているうちに、

がまたつは私たちと同じテーブルにつき、ナヤがついさっきまで持っていたエールを飲み始めた。


「ふぅ、うまい。」

「がまさん、もうお店閉店したの?」

「はい、今日は店じまいです。」

「そっかー、お疲れ様!」


改めて4人で乾杯する。

ここは平和で良い。

飲み屋という喧騒はあるものの、隣の店のようなトラブルに巻き込まれることがないからだ。

決してこれはフラグではない。

フラグではない!!!


と心の中で念じていると、居酒屋のドアがまたしてもギィと鳴った。

冷や汗が流れ落ちる。嫌な感じがする。


「変態さん、はい、これ飲んで!」

「えー???寝ちゃうからいやじゃああああああ」


ゆゆさんに羽交い絞めにされたまま、変態さんが居酒屋に入ってきた。

私の安らぎ、返せよ!


別のテーブルに、ゆゆさんと変態さんが座ったのを見て、関わらないよう決め込んだが、

次の瞬間、変態さんに見つかってしまったのだ。


「あー、あいぽんさーーーん!」

「え?あいぽんさんいるの??」


二人がこちらを発見して手を振っている。


「はは、あの二人あいぽんの事好きだよなw」

「あいぽんさんがなにげに可愛がってるからねぇw」


ダンスとたぬきさんが茶化してくる。

どうかトラブルがおきませんように・・・

どうか・・・。


居酒屋は一日の疲れを癒す場所である。

そしてここで飲んでいるすべての客が満場一致でその思いなのである。

トラブルメーカーである変態さんが何かしでかすのでは、と心ここにあらずだ。


「ZZZZ・・・」

「「「「寝たああああ!?」」」」


トラブルメーカーで注目されていた変態さんは、エールを一気に飲み干すとその場で寝てしまった。


「意外な弱点でしたねw」

「顔がもう真っ赤w」

「あの人最初から顔真っ赤でしょwwwww」


たぬきさんとダンスがいじって緑色のがまさんが突っ込む。

変態さんはお酒を飲むとすぐに寝る体質らしい。

私は内心ほっとしながら一日の疲れを癒すのであった。


ちなみに、居酒屋に変態さんをつれてきたゆゆさんはすぐに店に戻り商いを続けたそうだ。

あの二人、どんだけ競い合ってるんだ。

だから変態さんは飲むのを嫌がったのか。


やがて商人たちも店じまいした店から集まってきていつものように飲み明かすのであった。

この日、一番大変だったのは間違いなくナヤだろう。

お店をまわしながら、持ち込まれた投資資金を泣きながら数えていた。


こうして、ナヤの居酒屋では嬉しくも大変な悲鳴をあげるナヤと、飲み明かす客の喧騒が続くのであった。

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