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魔王の孤  作者: マシュマロン
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第一章 復讐の炎 噂

5.噂


午前中の授業も無事に終わり、昼食の時間となる。これまで勉強してきた甲斐もあり、授業で習う範囲なら余裕そうだ。


ニックは食堂で食べるらしく、一緒に昼食を取ろうと誘ってくれた。俺は弁当だが席で食べる分には問題ないらしく食堂へ向かった。


「そうだリオン、なんか食堂とか共同で使うとこには暗黙のルールがあるらしいよ。座る席が決まってたり、僕たちDクラスだから気をつけないとね」


「Dクラスは肩身が狭いな..」


シエルがBクラスで本当に良かった。この学園はまるでこの王国の縮図みたいな場所である。王族、貴族が優遇され、下のものは虐げられる。俺みたいな村出身にはこの待遇も贅沢だが、きっと豊かな暮らしをしてきた者には辛いだろう。


「ニックはこの生活は平気なのか?」


「僕の家は一応貴族だけど、そんなに力を持ってる訳でもなかったからね、それに1番下の子だから期待もされてないから..」


少し寂しそうに言うニック。魔界では完全に実力主義だったため、貴族やら王族やらはわからないが貴族だからといって幸せというわけでもないらしい。話を聞くとこの学院も賄賂が横行しているらしく。大金を積めば、BでもAでも好きなクラスに入れると言うことだ。つまり、実力で上のクラスにいくには相当の実力がないとダメみたいだ。


「ならシエルはどれだけすごいんだよ..」


「呼んだ?」


そこには弁当を持ったシエルがいた。食堂に向かう俺たちを見てついてきたらしい。横には仲良くなったらしい女の子が一緒にいた。


「あっ紹介するね、この娘は友達のアリスちゃん。こっちは私の兄のリオンだよ」


「アリスと申します」


「俺はリオンでこっちが仲良くなったニックだ。よろしく」


さっそくシエルも友達が出来たらしい。アリスは見た目、高飛車なタイプに見える。少し態度もそっけない。


「アリスちゃんはこう見えて人見知りだから仲良くしてね♪」


「なぜそれを言うのですか!」


顔を真っ赤にして怒り出すアリス。話を聞くとクラスでも素っ気ない態度をとっており、少し浮いていたところをシエルが話かけ仲良くなったらしい。緊張しいためどうしても初対面の人と上手く話せないようだ。


「素っ気ない態度をとった後の涙ぐんで自己嫌悪に陥っているアリスちゃんが可愛すぎて絶対仲良くなりたいって思ったの!」


「そんなこと言わなくてもいいですから!」


目の前で可愛い女の子二人が騒いでいるため、周りの視線が集まる。


「二人ともそこらへんにして食事にしよう、ほらニックも」


さっきから変に静かだったニックを見ると顔を真っ赤にして固まっていた。


「ニックどうしたんだ?」


「あっいや、二人ともとても美人だからびっくりしちゃって」


やはり、シエルは人間から見ても美しいらしい。それにアリスもそれに負けじと劣らずの美貌だ。周りの男子生徒が見惚れるのもわかる。


「それにしてもここで食べててもいいのか?なんか変なルールがあるんだろ」


食堂を見回すとAクラスと思われる集団が席をスペースを開けゆったりと使っているのに対し、隅っこでぎゅうぎゅうに積めてDクラスの生徒が食事をとっている。座れていない者もいるみたいだ。


「それは大丈夫みたい。上のクラスが下のクラスに行く分には問題ないけど、逆だと顰蹙を買っちゃうかも」


凄い格差社会だ。しかしそれでDクラスは嫌だと言う向上心が生まれるのなら悪いことばかりではないのだろう、俺は認めないが。


「次から違うところでお昼とる方がいいかな、座れない人もいるみたいだし。弁当ならここじゃなくて食べられるからね」


「なら僕もそうしようかな、簡単なものなら作れるし」


ニックもついてきてくれるみたいだ。


「あっ、えっと…」


アリスが何か言いづらそうにしていると、シエルが助け舟を出す。


「アリスちゃん家ではずっと専属の料理人が作ってくれてたみたいで、お料理できないみたいなの。どうリオン、アリスちゃんの分もお弁当作れない?」


恥ずかしいのか、アリスは俯いて顔を真っ赤にしている。


「あぁ大丈夫だよ、二人が三人になってもあまり変わらないしね。アリスはそれでいいかな?」


「あ、ありがと..お金はちゃんと返すから」


気にしなくていいと言ったが、アリスも譲らないので材料分だけもらうことにした。これで明日からも四人で昼食を取ることができる。


その後は他愛ない話をしながら昼食を食べ終えた。食堂から帰る途中ある人物が目に入る。勇者の娘ユウナ・シャーロットだ。彼女はDクラスの席にいながらその周りを避けるように誰も座っていなかった。しかしながらその姿でさえ様になっており、まるで孤高そのものだ。


「彼女、勇者の娘さんなんだよね、私たちのクラスにも噂流れてるよ。ん〜どれも気持ちの良いものじゃないかなぁ」


隣にいたシエルが俺の視線に気づいたのか話しかけてくる。シエルは勇者の娘だからと言って彼女に敵対意識は持っていないようだ。彼女には俺みたいに復讐に囚われて欲しくはないので安心する。


「噂なんて最初だけさ、そのうち誰も気にしなくなるさ」


当たり障りのない返事をする。入学したばかりの環境で裏切った勇者の娘なんて共通の話題としてはもってこいだ。しかしこの状況は使えるかもしれない。勇者の娘なら他のパーティメンバーの子とも関わりがあるかもしれない。


「午後の授業に遅れたらいけないから、教室に行こうか」


そうして俺とニックはシエルとアリスを見送りDクラスへ向かったのだった。


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